ASAKU® X Dragon Life
Part.1
この本の全13章。
アサク伝X真龍の魂
原作: 劉明昆
訳者:ZiON
あらすじ
神説年暦36772年
『神説大陸』の地表にある『人間界』『妖精界』『幻獣界』に、緑色の『鏡返ノ核』が出現し始める。毎回の出現場所が不定、中から核を守るための小さな魔物が同時に現れる。出現して24時間後赤色に変化し、半径一キロあたりにて『逆時震盪』でエネルギーを放つ。その力によって時間が過去へN年分に巻き戻し、そしてより強い魔物と、核を守護する『鏡返核獣(ミラーコア獣)』が召喚される。一つの『鏡返ノ核』に一回しか『逆時震盪』が発動しない、が、コアが出現するだけで周囲にいる動物や魔物の狂暴化を引き起こす。
『鏡返ノ核』の出現頻度が約3~7日、現在、コアを破壊する方法が見つかっていない。
『逆時震盪』が発生すれば、半径一キロの範囲内で過去へN年分のタイムリープが起こり、有機物でも無機物でも時間がN年分巻き戻される影響を受ける。例をあげるとつまり、「その場にいる人間はそのN年分若返る」という、実際の存在時間がNより少ない場合は、存在ごと消えることになるが、その範囲から出ると元通りに戻る。単なる時間の巻き戻しではなく、コアを守る魔物も多く出現するのと、そのN年前に存在していた者も一緒に現れるが、魂の持たない攻撃的なゾンビになってしまう。それでも、亡くなった人に会いたい人にとってはどうしても、期待を持ってしまうことでしょう。
魔物による破壊と、どれくらいの時間が巻き戻されるかは予測不能なため、誰も予兆が出る時に影響範囲内にとどまらない。『逆時震盪』が起きれば、逃げるしかない。
神説大陸に存在する種族の中で唯一、『逆時震盪』に影響されないのは精霊族だ。そして、『鏡返ノ核』は精霊界にだけ出現しないと言われている。理由こそ不明だが、『逆時震盪』に影響されない絶対的な防御力を持つ精霊でも、コアを破壊する能力がなく、魔物の出現を阻止するのには封印しか手段がない。
精霊聖王の命令により、『精霊界』光族の封印士・アサクとその仲間たちは、『鏡返ノ核』の出現場所を予測し、『逆時震盪』を測れる【不帰ノ羅針盤】を手に、“『逆時震盪』による危害と大量に出現する魔物の原因・『鏡返ノ核』を封印すべく”と、世界へと旅立つ。
第一章:封印士アサク(Action Chapter)
神説年暦36722年 8月12日 月曜日 午後三時
人間界の『フィル王城』の西南方向にある小さな村『エデンの村』では、『鏡返ノ核』の出現によって、村人たちを撤退させるべく、フィル王城から発遣された軍隊が、人々を守るため魔物と戦う。コアが赤色に変化し始め、残り時間30分あたりで、『逆時震盪』による大量の魔物に備えるため、軍隊が戦線を下げて村の外に包囲網を張ろうとしたその時、布陣の手前に急に『折畳ノ廻廊』が現れ、中から青い服に白マント、【聖印短劍】を持つ魔法使いらしき若い男と、その隣にピエロのようなぬいぐるみと、羽をもつ獅子、そしてかわいらしい女の子が一緒に出てきて、そのまま村へ向かっていく。慌てて止めようとする兵士に、男がこういう。
アサク「俺は精霊聖王のご命令により『鏡返ノ核』を封印すべくここにきた精霊光族の封印士、名はアサクだ。あんたたちみたいな役に立たない小物は早くどっかに逃げるんだな」
兵士 「な、この無礼もの!」
となりに立っている女の子がアサクにストレートを一発かまして、礼儀正しくこう言った。
イリヤ「精霊土族の猛獣使い・イリヤと申します。兄のご無礼をお詫びいたします。こちらの軍隊をお率いになっている将軍様はどなたでしょうか」
この時、将軍らしき男が布陣から出てきて、礼儀正しく挨拶をする。
スタール「精霊界からのお力添え、感謝いたします。俺はフィル王国軍団団長・スタールと申します。どうかコアを封印し、危害をお治めくださいませ」
イリヤ「村にはもう全員撤退しましたでしょうか」
スタール「ええ、全員撤退させました」
アサク「よし、なら安心して暴れるんだな!」
そう言って、ピエロのようなぬいぐるみと羽をもつ魔獅子を連れて村へ駆け込んで、魔物を戦うためにコアへと前進する。
イリヤ「イリアは魔獣の狂暴化について調査するために来ましたの。コアの影響で普段おとなしいものでもとても攻撃的になってしまいますので、どうかお気を付けてください」
イリヤはスタール団長へ一礼してからアサクに続けて村へと入った。
大量の魔物が襲い掛かる。アサクは【聖印短劍】で迎え撃つ。【聖印短劍】に切られた魔物はすべて封印術によって身動きを取れず、そしてその属性の力を短剣の中へ吸い込んで蓄えることができる。ほかの物に触れても同じ効果で、例えば石なら土属性の力を吸い込むことができる。
アサクが魔法を発動するのには、左手に正三星陣、右手に逆三星陣を放ち、吸収した属性の力を手の魔法陣に付与すれば、陣魔法で攻撃できる。敵が複数の場合は逆三星陣で拡散式の魔法を、一点攻撃する場合は正三星陣で集中式の魔法を発する。だが陣魔法の威力は、吸収した属性の力強さで決められる。
イリヤは【愛のムチ】で戦う。このムチに叩かれると、悪の魔獣は浄化され、正常の魔獣ならおとなしくなって攻撃してこなくなる、イリヤの友達になって一緒に戦ってくれることも。
コアに近づければ近づくほど敵が強くなり、アサクが一気にコア近づけることを決めて、【聖印短劍】をしめて、ピエロのようなぬいぐるみへ叫ぶ。
アサク「来い、ゴーストカード! 【日輪ノ剣】へ幻化してくれ!」
ピエロのぬいぐるみが【日輪ノ剣】へと変身し、剣身から太陽のような輝きを放つ。アサクがこの神剣を振りかざし魔物を迎え撃つが、日の光に当たらないところに入ってしまう途端に、剣の輝きが弱まり、力を失っていく。この時に剣からゴーストカードの声が発した。
ゴーストカード「だめです! 光のないところだと【日輪ノ剣】は力を失ってしまいます! もうすぐ日が落ちます。早く片付けないと!」
アサク「わかってる! すぐ片付けるよ」
アサクが魔獅子の背に飛び乗り、コアへ駆け込む。もうすぐ赤くなるコアを前にして、突然、どこか赤子の鳴き声が聞こえた。声を辿ってみると、コアのすぐ近くにある民家の隅っこに隠れている、赤子を抱えている若い女を見つける。
アサク「やばっ! 間に合わない!」
そう言って、アサクが若い女を、イリヤが赤子を抱き上げて、すぐ村の外へ出ようとしたが、時はすでに遅く、『逆時震盪』が起きてしまった!
強烈な震動波が拡散し、周りの景色も変化し始めて、女は塵となり消えていく。なのにまぜか、イリヤが抱えている赤子はなんの変化も起きなかった。驚きながらもイリヤは悲しく叫ぶ。
イリヤ「みな離れたって言ったのに! なんで!」
アサクが懐に入れてある【不帰ノ羅針盤】をみて、巻き戻された時間はちょうど80年。ゴーストカードがアサクに先にコアを処理しないと危害が広がると進言した。イリヤに赤子を守って村から離れるように指示するが、なぜか赤子が起きてからアサクにすっかりなついて、抱いてもらわないとすぐ泣き出す。仕方なく赤子をおんぶしてコアの封印に手掛けるアサクは、イリヤにお父さんって揶揄された。
アサク「あーもう、うるさい!」
赤子がその怒鳴りで泣き出してしまい、二人が同時に人差し指を口の前にかざして「しー」って言ったらまた静かになった。
アサク「コアを守護する魔王が出てきたな、とどめをさしいこう。さっさと任務を終わらせて帰ろうぜ」
このコアの守護魔王が巨大な食人花で、毒をもつ粘液とつるで攻撃してくる。アサクは行風術を使って攻撃をかわしながら飛んでくるつるを切るが、なかなか近づけてとどめをさせないでいる。
奇妙なことに、赤子は戦いの真っ最中でもまったく暴れず泣かずに、すごく静かだった。
イリヤがさき手懐けた短足イノシシを乗って攻撃を試みるが、魔王が強すぎて逃げ回ることしかできない。
この時にもう日が落ちてすっかり夜になってしまった。
ゴーストカード「やばい! もう日の光が――」
そう叫んですぐ【日輪ノ剣】からもとのぬいぐるみの姿に戻ってしまった。アサクはやむを得ずに【聖印短劍】で迎撃する。
アサク「くそ! 【聖印短劍】じゃ効果がない。吸収した属性の力が弱すぎる、もっと大きな炎じゃないとこいつを燃やせない!」
そして魔獅子に向かって叫ぶ。
アサク「俺に炎の攻撃を三回してくれ!」
魔獅子は宙返りして距離を取り、アサクに向かって、口から巨大なファイヤーボールを吐き出す。
アサクは左手を高く上げて手のひらをかざし、正三角形の魔法陣が魔獅子が放たれたファイヤーボールを吸収した。高いところへ跳んで、すぐ食人花の口の前に駆け込み、左手が拳に握って後ろに引き力を蓄えると、三つのファイヤーボールが一つに集中!
そして手を前にかざし、拳を開けて魔法を放つ。
アサク「正三星陣魔法! 火炎竜巻!!」
猛烈な火炎が食人花を燃やし尽くした。アサクはすぐコアの前に行き、透明な水晶で作られた箱【聖獄ノ籠水晶】を持ち出して、表面に刻み込まれている呪文で封印術を発動する。封印を行う間は魔獣がまた襲い掛かるが、魔獅子が守ってくれたおかげでみな無事だった。
眩しい光が放たれ、結界が築かれた。コアを無事封印したが、周りの景色はもうもとには戻れない、80年前のままだった。
助かった赤子を村人に渡そうとしたが、みな”あいつは悪魔の子だ”と騒ぎだして、誰も引き取ろうとしない。それは、赤子の母親が倫理を反して、父親が誰なのかを明かさずにその子を産んだからだ。赤子はなぜかアサクから離れようとしないし、仕方なく連れて行くことにしたふたり。イリヤは手懐けた短足イノシシとお別れをしてから、【折畳ノ廻廊】を起動し、二人は精霊界へ戻った。
第二章:防ぎきれないこと
神説年暦36722年 8月13日 火曜日 午前十一時
精霊王城の会議室にて会談が行われている。参加するのは精霊聖王・オデロス、オーカ将軍、ハプ司祭、精霊の姫君・ジェフロ、アサク、イリヤ、そして人間界から連れてきた赤子だった。
アサクは片足で跪いて、精霊聖王・オデロスにエデンの村でのできことを報告し、その傍らにイリヤがゆりかごに眠っている赤子をみている。
アサク「ことは以上です。聖王様」
精霊聖王・オデロスがアサクに表を上げようといい、となりのオーカ将軍に見解を求める。すると、オーカ将軍の顔がすこし赤いのを気づき、叱るように言う。
オデロス「そなたたちまさか、昼間から酒を飲んだではあるまいな」
オーカ「そ、それはその、ハプ司祭が造った酒が良すぎて、目覚ましにちょうどいいからで……」
ハプ「オーカ、おぬし……せっかくよい酒を取っておいてやったのに」
聖王オデロスがお怒りの様子で少し咳払いをしたら、周りがしんとなってしまった。それから手を一振りして、ハプ司祭がすぐ注いておいた盃を聖王に渡す。一気に飲み干してまことにうまい!と言ってからまた真顔でアサクに続けようと合図をした。
ジェフロ(不機嫌)「父上までおふざけして!まだ公務が残っているのでは」
オデロス「大事ないよ、精霊界がいつものように平和でのんびりだ」
ジェフロ(手を腰にあてて、呆れる)「もう、少しは危機意識を持たないと!」
アサクが頭を掻いてから、片手を顔に覆いて呆れていう。
アサク(独り言みたいな)「この老いぼれたち、本当に『鏡返ノ核』のことを気にしているのか」
オーカ「我々精霊界はそもそも外界のことを干渉してはならん決まりだが、大賢者聖竜王様が、『逆時震盪』が精霊しか対抗できないからと天神界の神託だといい、聖王様にエデンの村のコアを処理するよう、おまえを指名してな」
アサク「またあの陰謀家の聖竜王?やつの言いなりにならなくだって」
オデロス「天神界のお達しだ、仕方ない」
アサク「くそ……」
このとき、ハプ司祭は赤子に近づき、よく観察する。
ハプ「ふむ、この人間の赤子、『逆時震盪』の影響を受けないとは、確かに不思議だ」
同時にイリアが赤子を包み込んでいる毛布を開けてみると、毛布に<ADAM(アダム)>が書いてあて、赤子の背中に、虹紋章のバースマークがみえた。それに驚いたか、聖王がすぐ近寄って赤子の背中を確認し、オーカ将軍も続いた。
オデロス(文字ごとはっきりと)「なんと……虹、聖者」
オーカ「ではこの赤子こそが新たな虹聖者か、名は……アダム」
ハプ「アサクがエデンの村へ出向くのも奴らの計画通りってわけか。一本取られたわい」
アサク「で、どうすればいいですか。この子ずっと俺にべったりで、起きて俺に抱っこされてないと気づくとすげー泣きわめくんですよ。いっとくけどベビーシスタはいやだからな」
オーカ「待った! アサク、前の二つのコアの出現場所、覚えてるか?」
アサク「一つは妖精界の『時間図書館』で、もう一つが人間界・フィル王国東南部の『フジルス砂漠』です。二箇所ともすでに『逆時震盪』が起きてしまったから、聖王様のご命令とおりに、まだ震盪が起きてないエデンの村へいきました。時間的にいけたはずだったけど、この子を助けたため結局封印が間に合いませんでしたが」
ハプ「人間界に出現した二つのコアとも、フィル王国の近くか、どうも匂うなぁ…」
オデロス「いかん! オーカ将軍、すぐ禁衛軍を集結し戦闘態勢に入りたまえ!」
聖王の指示で、オーカ将軍がすぐ会議室から飛び出し、警報を鳴らす。
アサク「どういうことですか??」
ジェフロ「早く赤子を守って」
イリアすぐまだ眠っているアダムを胸に抱きしめた。
ハプ「これは、とんだ企みだ! 『逆時震盪』を利用し、『時間図書館』で偽りの歴史を作り、『フジルス砂漠』にて過去に存在した『ミラージュレーク』を呼び戻した。そしてこの子はやつの手駒…震盪の影響をうけないとわかっててあそこに置いた。おぬしがこの子を連れて【折畳ノ廻廊】で精霊界に戻ることで、震盪の痕跡が残り、もともとコアが侵入不可能の精霊界に隙間が生じてしまったのだ」
まさにその時、急にとどろきのような音が響いて、精霊王城が地震でも起きたように揺らいだ。
ハプ「この子が起きて騒ぎだしたら見つかってしまう。わしが深い眠りにつくように術をかけとくよ。イリア、アダムは任せたぞ。アサクは早く敵襲に対応しろ!」
イリア「了解いたしました。ちゃんと守って見せます」
アサク「そこまで深刻ですか! すぐ向かいます! ゴーストカード、魔獅子、ついてこい!」
二人の従士を召喚して、三人はすぐ音がした場所へ急いだ。着いた時には精霊王城正殿の真上に時空の裂け目ぽっかり空いてしまい、すでに大量の魔物が湧き出している!手前にオーカ将軍が禁衛軍を率いて応戦してるところだった。
アサク「なんてことだ!」
アサクはすぐゴーストカードに【日輪ノ剣】に変身させ、魔獅子とともに戦いに加わった。聖王オデロスもジェフロを連れて正殿に到着。二人の周りには禁衛軍が守りを固めている。同時に、九尾妖狐が時空の裂け目から正殿へと降りってくる。
九尾妖狐「あらまあ…ふふ、美しきあたしをこんなにも大勢で出迎えてくれたのかい、うれしいねぇ、さあ、情熱的な歓声をあげなさい」
アサク「この変態野郎!」
その時、全域空間防御を担う精霊兵士より報告が届いた。
精霊兵士「報告! 聖王様、精霊聖地にて『鏡返ノ核』が出現!」
聖王オデロスがすぐ聖地を守るようにオーカ将軍に指示し、正殿の魔物が聖地に行けないようにと一部の禁衛軍兵士を残し、後をアサクに任せて、その場を立とうとしたが……
ジェフロ「わたくしは残ってアサクに協力するわ!」
オデロス「だめだ! すぐオーカ将軍に続いて聖地へ向かいたまえ」
聖王オデロスがオーカ将軍、ジェフロとイリアを率いて正殿後方にある廊下を通り、精霊聖地へ向かう。
正殿に現れた魔物たちがアサクと近衛軍に着々と退治されていくが、なぜか九尾妖狐がまるで見世物を見ているようにびくとも動かないまま、やがて魔物が彼だけとなった。
九尾妖狐(高笑いして)「スポットライトはあたしだけを照らすものよ。どう? スーパースターみたく輝いているでしょ」
そう言って突然と手を上げ、強い衝撃波を放つ。
精霊禁衛軍を守ろうと、アサクはすぐみなを庇うように最前列に出て、全身から聖光を放ち、【獅幻神裝】を纏って九尾妖狐の攻撃を受け流した。
左従者のゴーストカードが変身した【日輪ノ剣】を手にかまい、右従者の魔獅子が変身した【獅幻神裝】を纏った姿こそ、アサクの完全なる武装なのだ。
アサク(禁衛軍に向かって)「おんたたちはもう聖地に向かってくれ、ここは俺に任せろ!」
禁衛軍兵士「了解しました!」
返事した禁衛軍の兵士たちはすぐさま聖地へと駆け付ける。
九尾妖狐「あたしは、鏡界から降臨した陰魔六将軍、名は九尾妖狐。親しくして~“九ちゃん”って呼んでもいいのよ。さすが天神界の力を得た者ね、アサク。神と精霊の融合体か、本~当、反則よね」
アサク「なんなんだおんたは! 九ちゃんとか、誰が呼ぶか! あいにくこっちは遊んでる暇ないんだな、今片付けてやる!」
九尾妖狐「さて、君ごときで、このあたしに勝てるかしら?うふふ……」
笑い声を発したと思えば、もうアサクの目の前に瞬間移動して、攻撃をかまってきた!
九尾妖狐の攻撃が思ったよりも重く、全身武装した状態のアサクでも、【日輪ノ剣】で攻撃を受け流しながら陣魔法で魔法攻撃を吸収して反撃をするが、どうも苦戦に陥ってしまう。幸い、【獅幻神裝】の防御でなんとか保つことができた。
素早く動きながら攻撃してくる九尾妖狐は余裕ありげに笑いかけてくる。
九尾妖狐「はははっ、神と融合したせいで、もともと持ってた精霊の力を失って、元素魔法が使えなくなったのね。それで受けたものを吸収して反撃に使うしかなくなったわけか。なるほど、これはこれは、神様って意地悪いねー、はははは」
アサク「なんでそこまで俺に詳しいんだよ!?」
九尾妖狐「それは~愛してるから♥だよ(ウィンク)」
アサク「気持ち悪っ!」
九本の尾が一斉に伸び、九尾妖狐がセクターなポーズを取ってこう言った。
九尾妖狐「さあ、あたしのすべての愛を乗せる、最強の一撃をうけてごらんなさい♥」
先と比べものにならないほどの莫大な魔力が九尾妖狐の体に集中していると感じたアサクは、この一撃で勝負がきまるとわかった。
アサク(テレパシーでゴーストカードと魔獅子に)「あれを使うしかない」
ゴーストカード(テレパシー)「マスター、本当に使いますか? まだ完全に使いこなせてないのに、発動した後力が抜けて、いつ回復できるか分からないのですよ!」
魔獅子(テレパシー)「でも確かにそうするしかなさそうです。自分ももう攻撃を受けきれません。まずはやつ倒すことを考えましょう。そのあとは自分たちがマスターを守ります」
心で会話をかわす僅かな間に、九尾妖狐はもう力を整えて、技をぶつけてくる!
九尾妖狐「九重狐撃・滅骸破!!」
まさに同時に、アサクは宙返りして背中から天使と精霊の翼が生えてきて、【七属性ノ鍵】がアサクを中心に飛び回り聖光を放ちながら、七本の巨剣となる。
アサク「俺にはまだ神の力がある! 七鍵衝殺陣!!」
互いの大技が宙にぶつけ合い、九尾妖狐が避けきれずに重傷を負い、間一髪で時空の裂け目を通って鏡界へ逃げ帰って、あまりの強力で精霊王城もほとんど壊滅してしまった。
ゴーストカードと魔獅子が変身を解いてもとの姿に戻り、アサクも技の影響で全身の力が抜けてしまって、意識はちゃんとしてるが、もうまったく動けない状態だ。魔獅子はアサクを背負ってゴーストカードとともに精霊聖地へ向かう。
これで、数万年以来一度も侵入を許したことがないと誇る精霊界も、正式に破られてしまったのだ。
精霊聖地に着くとそこに『鏡返ノ核』が中央の祭壇に現れていて、聖王オデロスが部下たちを率いて湧き出している魔物たちと戦っている姿がみえたが、すでに力が残されていないアサクには何もできない。
アサク「どうしてハプ司祭が、早くコアを封印しないんだ?」
第三章:永凍絶界
神説年暦36722年 8月13日 火曜日 午後二時
精霊界で最も重要な場所『精霊聖地』に、『鏡返ノ核』が出現、ハプ司祭がコアの近くにいながら、魔物ばかりかまっていてコアを封印しようとしない様子。
魔獅子がアサクをハプ司祭のとなりまで連れいった。
アサク(虚弱)「どうしてすぐコアを封印しないんですか。【聖獄ノ籠水晶】をくれたのはあなたなのに……」
ハプ司祭「【聖獄ノ籠水晶】は聖竜王が天神界から持ってきたもの、おぬししか使えないといいおった。だから、コアを封印する任務をおぬしに与えたのだよ」
アサク(虚弱)「そんな……俺はもう、【聖獄ノ籠水晶】を発動する力も残されてない。まさか『逆時震盪』で精霊聖地が破壊されるのをただ見るしかできないというんですか」
ハプ司祭「とにかく休んで、少しでも回復に努めるのじゃ」
この時、イリアが泣きながらこちらに走ってきた。
イリア「うう……黒マントの男にアダムを奪い去らわれてしまいました。イリアでは全然太刀打ちできなかったの。ごめんなさい、イリアのせいだわ、どうしよう……」
アサク「あなたは悪くねえよ、もう泣くな」
ハプ司祭「精霊界に来てアダムを奪うことも、やつの計画の一環なんじゃろうな」
オーカ将軍が精霊禁衛軍を率いて攻撃の陣を組んでコア周辺にいる魔物たちに反撃を繰り返し、聖王オデロスがコアの真上に雷撃の術をかけてコアを打ち砕こうとするが、まったくの徒労だった。
この時に、強い黒き光が聖地の高台から放て時空の裂け目を作り、その中から黒竜に乗っている騎士の姿が現れた。彼は響き渡る声でいう。
フィリップス「俺様は陰魔二将軍、フィリップスだ。鏡界を代表し、正式に精霊界に宣戦布告を告げる!」
このフィリップスと名乗った黒竜を乗る騎士から放たれる特殊な魔力に、ただならぬ恐怖を感じたかのように、周りの魔物たちがみな身動きがとれなくなっている。
アサク・オーカ「これは! 失踪した風族の精霊・サルの霊力!?」
アサク「どうしてあいつから精霊の力を感じるんだ!」
オーカ「いや、正しくは風属性の精霊の力と闇属性の魔力が混ざり合っている強大の力だ! この精霊界では相手になれる人いないかもしれん」
オデロス「……」
フィリップス将軍が手を振ると、黒竜から強い竜巻が襲ってくる。精霊禁衛軍軍団の大半が竜巻の勢いに耐えきれず吹き飛ばされ、何人か苦労して防御術を立ち上げて対抗しようにもあまり効果が見られない中、なぜかジェフロにだけまったく影響がなく、すこしもダメージを受けていない。その様子をみて、聖王オデロスはすぐみなに指示をだす。
オデロス「ジェフロ姫の後ろに隠れろ!」
精霊軍団が群れとなってジェフロの後ろにくっついて、ジェフロが移動すると軍団も続いてくという、なんとまあ奇妙な絵面になった。
ジェフロ「どうして私の後ろに隠れるのよ。私はあのフィリップス将軍というやからを懲らしめにいきたいの!」
そういって奔ろうとするけど、姫が動いてしまうとみな吹き飛ばされるからと、周りに止められる。
ジェフロにだけ起きるこの現象に気づき、フィリップス将軍が急に激動した様子でジェフロに駆けてくる。みながジェフロをかばおうとする時に、まさかの攻撃ではなく、フィリップス将軍がジェフロを抱き込んで強引にキスした。その場にいる全員が目の前に起きたことに驚いていると、軍団に襲い掛かる竜巻もフィリップス将軍のこの行動でやんだのだ。
ジェフロが我に返って顔を真っ赤にし、怒りと恥ずかしさが混ざり合い、フィリップス将軍を突き出して、ぱっとビンタを食らわせた。
ジェフロ「この……不届き者! この私に無理やりキ、キスするなど! 何様のつもり!」
赤くなる頬に手を当て、ガッカリした様子でフィリップス将軍はいう。
フィリップス「君は…忘れたのか……」
そしてすぐ近寄った黒竜に乗り、高く飛んで離れた。
遠くに離れていくフィリップスの後ろ姿を見て、ジェフロはなぜか、胸が悶々と締め付けられる気がした。指で先強引に奪われた唇を撫でてみると、涙が勝手に流れてくる。
ジェフロ(心の声)「この悲しい感情はいったい……?」
フィリップス将軍が精霊軍団の表に戻り、大声で言い放つ
フィリップス「精霊界の最強のものを出してこい!」
すると、オーカ将軍が陣から高く上へ跳んで、マウントであるグリフォンを召喚して背中に乗り、フィリップス将軍と対峙する形になる。
オーカ「俺はオーカ将軍じゃ。精霊界最強の守護者が相手してやる」
フィリップス「ほう、この時をずっと待っていたぞ。やっとオーカ将軍とやり合う機会がきたか」
オーカ「一つ、疑問に答えてもらおうか」
フィリップス「ふんっ、二つとも答えてやるよ。一つ、そう、俺様そこが、かつて失踪した風族の精霊・サル。二つは……お前らが知ってるサル、もともと二人いたのだ。一人が精霊界に、一人が鏡界にいる。だが、俺様の本当の名は、フィリップスだ」
すでに弱っているアサクをちらっと目をやり、フィリップスは続いてこういった。
フィリップス「そのアサクと同じ、”ダブルフェース”をもっている」
オーカ「なんだと!」
アサク(心)「”ダブルフェース”……ってなんだ?」
この時、ゴーストカードがフィリップス将軍が身につける剣をみて、慌ててアサクに話しかける。
ゴーストカード「大変です。あの人、【月輪ノ剣】を持っています!」
アサク「そんな、まさか」
ゴーストカード「僕のセンサに間違いはありません。なぜなら僕と【月輪ノ剣】は、セットのゴーストカードだからです!でも、なぜあの人が【月輪ノ剣】を持っているんでしょうか」
フィリップス「国としての挨拶はここまでにしょう。そろそろ戦いを始めようか、まずは……」
フィリップス将軍が指を鳴らすと、精霊聖地に現れたコアが急に色が変わって、『逆時震盪』を引き起こす状態になった!アサクを含めて精霊族の全員が、自分の目を疑わずにいられない!
アサク「あいつ! 『逆時震盪』を加速させやがった!!! 早くコアを封印しなきゃ!」
でも依然と体力がもどらないままのアサクは、魔獅子の背中から降りる気力もない。
アサク(魔獅子に)「コアに触れるように、近づけてくれ」
魔獅子は指示に従ってコアのすぐそばまで近づけて、ゴーストカードがアサクの右手を支えて、コアに触れた。触れた瞬間に、コアの色の変化が明らかに遅くなったものの、アサクが冷や汗をかいてひどく苦しい表情をしている。
ハプ「よせ、アサク。それでは封印は無理じゃ、ただの時間稼ぎにしかならんし、そのままだとおぬしが力尽きでしんじまう!」
アサク「ただの時間稼ぎでもいい、もう、今の俺にはこれしか…」
するとイリアが自分の手をアサクの手に重ねた。
イリア「イリアも、お兄さんと一緒に精霊界を守ります!」
アサク(頭を少し下に向いて)「ああ」
オーカ将軍がグリフォンに乗ってフィリップス将軍へ突撃をかける。二つの世界での最強戦力を持つ男たちの対決は激しく繰り広げられて、交わる攻撃の震動波で近くにいる魔物も、一騎打ちを見守る精霊軍団も痺れさせられて、ただその場に動けずにいた。
長い戦いとともに時間が過ぎ去り、アサクもそろそろ限界を迎えてしまう。
フィリップス(オデロスに向かって)「精霊聖王よ、一つ教えてやろうか。この【鏡返ノ核】に設定されたタイムリープの時間は、ちょうど1000精霊年前だよ(人間界約41年)! そう、その精霊八大族の時代に!」
フィリップス将軍の言葉で、精霊族のみなが一気に顔が青ざめた。
オーカ「好き勝手にはさせん。混沌極まりないの1000精霊年前などに戻ってしまったら、今の世界線の神説大陸の全面的壊滅を招いてしまう!」
オーカ将軍が奥手の” 圓気裂衝砲”を発動しようと同時に、まさかのフィリップス将軍も、同じ大技をかけて決着をつけようとした。
オーカ「ほう、おまえは確か、俺のまなでしの精霊界のサルだな!」
が、それを聞いたフィリップス将軍はただ微笑んで、答えようとしなかった。
二つの技がぶつけ合うと同時に、アサクとイリアの力ももうコアを抑えることができなくなり、コアが鮮やかな赤色を放ち、『逆時震盪』はまさに引き起こされようとしていた時に。
オデロス「精霊界の王として、精霊界をいまここに壊滅させるわけにはいかん。すべての空族精霊よ、集結し伝送陣を発動せよ!」
空族精霊たちがすぐさま伝送魔法を発動する。
オデロス(オーカ将軍とハプ司祭に向かって)「精霊界を守りたまえ!」
オーカ将軍とハプ司祭はすぐ聖王オデロスのもとに駆け付けた。
ハプ(アサクに向かって)「いけ! できるだけ遠くへ逃げるのじゃ!」
聖王オデロスが手のひらに特殊のトーテムをかけると、トーテムが一匹の鷹となり、地中に向かって飛び潜った。そしてオーカ将軍とハプ司祭に頷きで合図をして……精霊界最大な封印術を発動する。
オデロス・オーカ・ハプ「永凍絕界!!」
『逆時震盪』が始まる頃に、空族の伝送魔法も発動した。
フィリップス「くそ! 精霊界ごと時間を凍結しようだと! 俺様はこんなところに閉じ込められたりはしない!」
そういってすぐ時空の裂け目を開けたが、ジェフロを一目みてから裂け目に入って姿を消した。
『逆時震盪』は永凍絕界によって止められてが、同時に伝送陣も停止してしまい、すべての精霊を伝送することはなく、アサクは幸運にも、伝送で逃げることができた。その瞬間に、ハプ司祭の声が聞こえた。
ハプ「精霊界を救うのには、精霊女王アランダを見つけるしかない。頼んだぞ、アサク」
アサクは涙が止まらないまま、伝送通路に入り、そのまま気絶した。
この戦いの末、精霊界の時間は止まったままになり、誰も入ることができず、そして、誰も出られなくなってしまったのだ。
第四章:人魚之淚
神説年暦36722年 8月19日 月曜日 午前十時
目覚めたアサクが初めに聞こえたのが、ゴーストカード、魔獅子とイリアの三人の声だった。
ゴーストカード、魔獅子、イリア「よかった!」
ゴーストカード「マスター! やっとお目覚めですか!」
イリア「もうーお兄さん! 二度と目覚めないかと心配したんだから!」
アサク「俺は……大丈夫だ。ここどこだ?」
ゴーストカード「僕たちは幻獣界の人魚国に伝送されたのです。女王様がこのお部屋を手配してくださいました!まさか一週間も眠り続けるとはな」
周りを見渡してみたら、さんさんと輝く日の光が水を通して照らしてるとても暖かい部屋だが、どう見ても女性の部屋だ。
ゴーストカード「人魚国には女性しかいませんからね」
アサク「ええ……」
アサクの身の周りにたくさんの花が飾っている。
アサク「で、この花はいったい……」
ゴーストカード(肩を軽くすくめてニヤっと)「マスターのファンたちから送られてきたものです。もう人魚国丸ごと虜にしちゃってるくらい大騒ぎですよ。お見舞いといって花を何度も持ってくる子もいます。なにせ女王様が自ら『美しき眠りの精霊王子』という異名をつけちゃうくらいですからね……」
魔獅子が顔をそらして笑いをこらえている。
そのとき、外から雑踏とした人の声がしてきた。ゴーストカードが、もう起きたってバレたら大変な目に合うから、早く寝たふりをするようにとアサクに合図し、ぬいぐるみのふりをした。アサクが横になって寝たふりをすると、やはり十何人の人魚の女の子がプレゼントと花をもって部屋に入ろうとする。魔獅子がすぐ姿をけして入口を塞ごうとしたが意味がなく、女の子たちが部屋に駆け込んできて、祝福を込めてアサクの頬にキスして、わいわいとはしゃいでからやっと部屋をでた。
皆出た後、アサクは起き上がり、キスされた頬を少し撫で顔を赤くして、満足しそうに笑った。それをみて、隣のイリアは不機嫌そうに口を尖らせた。
ゴーストカード(アサクの頭に一発殴って)「しっかりしなさい!」
アサク「俺見世物じゃねえし。早くここを出て情報を探そう」
イリア「お兄さん今や『美しき眠りの精霊王子』ですから、そのまま外にでると騒ぎになっちゃいます。イリアが変装して差し上げますわ」
人魚国は結界によっと海の中に沈んでいる王国で、結界の中なら、地上と同じように呼吸ができるところ。
この日、大通りに変な歩き方をする一人の人魚(?)の女性(?)がいた。そう、それはまさに、髪型を変えて化粧もし、方にピエロのぬいぐるみを乗せたメイド服姿のアサクだ。その隣に人魚に成りすましたイリアと、術で姿を消した魔獅子。
アサク「なんで俺が女装しなくちゃならねえんだよ! 不格好だし、下スースーするし!」
イリア(笑いながら)「パンツを履かないからでしょう」
アサク「女のパンツなんてぜってー嫌だ!」
ゴーストカード「こうでもしないと、街中で正体ばれたら、何千何万の人魚の女の子が寄せてきますよ」
魔獅子「さすがにそんな大勢は止められませんな」
アサク「ここ一体どうなってんだよ。空気もすごく濁ってる気するし、風もない、なんか変な感じ」
ゴーストカード「人魚国は昔からとても排外的で、特に同じ幻獣界の百獣国とは敵対関係です。僕も魔獅子も百獣国の民なので、気付かれないようにしないといけません。人魚国は精霊界との関係がとても良いと聞きます。それで、こちらに伝送されたかもしれません」
二人が会話している間に、イリアがすれ違った天使魚と交流し始める。
アサク「魚と話してんの?」
イリア「イリアはすべての生き物と意識疎通ができるのです。かわいい子をみたんら友達になりたくなるんですよ。」
アサク「俺はゴーストカードと魔獅子としか話せねえから」
この時、向かいに何人のメイドを連れて歩く貴婦人らしきの女性がアサクをしげしげと観察する。今にもバレたかとはらはらする二人だが……貴婦人はイリアを眼中にない様子でアサクに話しかける。
貴婦人「あら、ちょっと胸が足りないけど、なかなかじゃないの~あなた、名は何という?どちらの使いなの?」
アサク「お、おそれいります。あ、アクリアといいます。えっと、マダムメールに仕えております」
貴婦人「なんと! あなたのような美人が、あのメールに仕えてるなんて、もったいないわ!」
貴婦人すぐ懐からパールを十個取り出してアサクに渡してこういう。
貴婦人「はい、持って、これは前金よ。すぐあのばばあのところを出て。明日からヴィタリス公爵邸に来なさい」
勝手に言い終わると、パールを手にしてポカンとした顔のアサクたちをお構いなしに、メイドたちを連れてその場を去っていった。
アサク「おっぱい足りないとか……」
イリア「アクリアって……ははははは~女装でもお気に入りされちゃって、すごいですわお兄さん!しかも、デタラメに言ったのに、まさか本当にマダムメールがいるなんて、はははは」
となりにいる魔獅子がもう笑いすぎて腰がぬけそうだ。
アサク「笑う場合か! 大事な任務があるんだぞ! コアがどうなってるわかんないし、ハプ司祭が精霊女王を見つけて精霊界を救えと俺に言ったんだ。メイドごっこしてられるかつうの!」
ちょうどおなかが鳴ったから、近くのレストランが見えて、とりあえず腹ごしらえをしようと店に入った。イリアが天使魚とバイバイして、アサクと一緒に一番目立たない隅っこの席に座ると、メニューに目を通す。
アサク(メシューを見て)「ワンセットでパール一つ!?」
ゴーストカード(すぐアサクの口をふさぐ)「しー、大声出さないでください。嫌なら女王様が用意してくださった部屋にお戻りになれば?なんでも使い放題ですよ」
アサク(プルプルと)「ぜってーやだ。(ちょっと恥ずかしく)まあ女の子にモテるのは悪い気しないけど…」
イリア(一発殴って)「お兄さんのスケベ!」
店員「お決まりですか」
アサク「セットを四つくれ」
店員「お二人でそんなに? 本当にたべられますか?」
アサク「大丈夫。食べられるよ」
店員「かしこまりました。ではパール四つ、いただきました。すぐご用意いたしますね」
食事が運ばれたら、アサクは飲み込むようにパクパクと食べて、ゴーストカードと魔獅子はテーブルの一角にコッソリと食べた。
アサク「俺たちはやく人魚国から出るべきだと思う。百獣国へ行って俺の友人のブラッド国王に助けをもとめよう」
魔獅子「そうはいっても、人魚国では【折畳ノ廻廊】の使用を禁止してるから伝送は無理です。地上の百獣国へ行くのには連結通路を通らなければならないが、もちろん警備がつけてるから、人魚女王の許しがないと通してもらえないんじゃ…」
イリア「それに、何の挨拶もなしに消えるなんて、失礼極まりないことですわ。ここはやはり一度女王様にお礼を申し上げに謁見をした方がいいとイリアは思います。」
ゴーストカード「人魚国と精霊界とは交流がありますが、わざわざ『美しき眠りの精霊王子』なんてマスターの存在を宣伝することに、なにか良からぬ意図を感じます。」
アサク「でもなぁ、戻らないとすると、金を稼がなきゃだな……」
イリア(笑いながら)「お兄さんにメイドになって、イリアたちを養っていただくしかほかありませんね」
ゴーストカード・魔獅子「そうですね」
アサク「なんで俺ばっかりー」
楽しい会話の中で、誰もすでに人魚兵士に囲まれたことに気づかなかった。
人魚兵士「精霊界からきた高貴なる友よ、ご相談があるので王城へと、女王陛下直々のお誘いでございます。」
アサク「あ、見つかっちゃったか」
人魚国王城へ移動する途中でも、熱心のファンたちが道の両サイドを囲んでアサクに“精霊王子さま、愛してる”なんて歓声を上げていた。
夜の人魚国王城にて、案内された正殿では、人魚女王が王座に座っていて、アサクたちの到着を待っていた。二人は一礼する。
アサク「女王陛下、精霊界のアサクと申します。貴国に来たのはその、事故によることでして、どうかお許しください」
ミカナ「わたくしが人魚国女王・ミカナと申す。付き人の二人も、姿を現すがよい」
ゴーストカードと魔獅子は一斉に術を解いて現し、女王に跪いて挨拶を。
ゴーストカード・魔獅子「ご無礼をお許しください」
ミカナ「よい。状況はわかっている。皆のもの、もう去るがよい」
そして正殿には、アサクたちと女王だけが残っている。
ミカナ「わたくしに着いてまいれ」
女王がアサクたちを宮殿にあるガーデンの一角へ連れてきた。
ミカナ「静かに見ておれ、そして何があっても、アサク、わたくしに合わせておくれ」
どういう意味かさっぱりだが、アサクは了承した。
この時、ガーデンに若い女性が歩き出て、上から真っ白な髪をした精霊らしき男が、女性の前に舞い降りてきた。二人は愛情深くに見つめ合い、男が貝殻とクリスタルで飾った花束を取り出して、女性に話しかける。
白髪の男「人魚姫・ユリア、どうか、俺と結婚してくれ」
ユリア(首を振りながら)「フルフィ様、ごめんなさい。婚約はお母さまにお許しを請わなければ、お約束できませんの」
白髪の男(手を引き)「ならば駆け落ちだ!」
ユリア(もう一度首を強くふる)「私もあなた様をお慕い申し上げておりますが、そのようなことは許されませんわ」
フルフィが強引にユリアを連れて行こうとすると、ミカナ女王が影から出た。
ミカナ「この無礼者、娘からその手を離し、今すぐ立ち去れ!」
フルフィ「女王だからって俺が怖気づくとでも思うのか。本気で暴れたら、この人魚国では俺に勝てるやつなんかいないぞ」
ミカナ「さぞ傲慢とみえる。まあ確かに、わが人魚国は、強いおのこを国王にし国を守ってもらう必要があるが」
フルフィ「はは、それって俺たちの婚約を認めるってことだろう?」
ミカナ「国王は実力と美しさを備える随一のおのこでしかなれぬ」
フルフィ「それはそれは、お褒めに預かり光栄だ、女王陛下」
ミカナ「否、その資格があるのは、そなただけではない。最近王国にいらっしゃった『美しき眠りの精霊王子』が、そなたより容貌が優れて、国民に愛されているのだ」
そう言って、アサクが隠れている物陰に指をさした。
アサクは仕方なく出てきて、どうにもかたくるしい感じで言う。
アサク「俺こそ、真の国王になれる精霊王子だ。貴様、俺をみてさっさと恥じ入って消えるといい」
フルフィ「ならばやってみようじゃないか、誰が勝つか定かではないぞ。な?精霊族のアサク」
アサク「! なんで俺を知ってる??」
フルフィ「……」
ミカナ(一度手を叩く)「もうよい、口喧嘩はおよし。女王たるもの、公正公平でなくてはな。ならば、正式に試合を行うことにしよう。勝つほうが、ユリアの夫となり国王になる。」
アサク「なんだって!?」
フルフィ「のった! いつだ?」
ミカナ「三日後、人魚国のコロシアムにて。」
ユリア「お母さま! なぜそのような勝手な約束を……あんまりです!」
悲しむユリアは泣きながら走っていった。
フルフィ「首洗って待ってろ」
そして飛び立って夜の空に消えた。
アサク・ゴーストカード・魔獅子「はめられた……」
女王は静かに頷いて微笑みをみせた。
正殿に戻ると、アサクがトンと床に座り、とても不機嫌な様子だ。
ミカナ「すまなかった。がしかし、それも無礼を承知で仕方なくしたことなのだ。なにせ、人魚国にはもはや幻獣であるあやつを止めるのに十分な力を持たぬからのお」
アサク「幻獣?フルフィのことですか、女王陛下」
ミカナ「いかにも。あやつが幻獣界百獣国『幻化部族』狐の一族のもの。人魚の民は決して百獣国のものと結ばれてはならぬのだ」
魔獅子「今の幻獣界では三大国が均衡の敵対状態にあります。ゴーストカードと自分も、囚われてないだけでも幸いってくらいです」
アサク「でも、人魚国って軍備がそこまで弱まってますか。それに二人が愛し合ってるのなら、別に硬く掟を守らなくても」
女王が立ち上がり、王笏で王座の真上を指すと、天井が突然崩れて、その奥にあるのは……
アサク「鏡返ノ核!? しかももう真っ赤で……すでに震盪が発生した!」
すぐ【不帰ノ羅針盤】を取り出して、巻き戻された時間を測るが、なんの変化も見られない!つまり、人魚国が『逆時震盪』の影響を受けなかったことになるが、ありえない。一体どういうことだろうと、アサクは驚きを隠せない。
その時、大量の魔物がコアから湧き出して、みなすぐ戦闘態勢に入る。その中の一匹が女王に襲い掛かる。
イリア「陛下! 危ない!」
驚くことに、魔物が女王の体を触れることなく、そのまま通ったのだ。
ミカナ「心配ない。精霊アサクよ、この鏡返ノ核を封印してもらえぬか」
アサク「わかりました!」
仲間の援護でコアに近づけて、【聖獄ノ籠】で封印を成功すると、呪縛から解き放ったように、今まで人魚国を覆う濁った空気が一気に晴れた。
再び王座に座り、女王はことの真相を語り始める。
ミカナ「コアが出現したのが半年前のこと。我が人魚国軍隊の総出でも、魔物の軍勢には太刀打ちできなかった。そして、『逆時震盪』が起きたのだ」
アサク「ではなぜ時間の変化が測れなかったのですか?」
ミカナ「それは巻き戻された時間の長さが130年がゆえ。130年前、人魚国はこの深い海の底ではなく、ちょうどここから真上の島にあった。海に沈んだのが30年ほど前のこと」
ゴーストカード「てことは、震盪のせいで130年前の人魚国が今再びそこで現れたってことですか」
ミカナ「そうじゃ」
アサク「じゃ震盪の後…ここは……」
ミカナ「消し去られてしまったよ、なにもかも。今そなたたちが見るすべてが思念体だ。それでも、我々は今もこのように、ここにおる。」
左耳に飾ってる雫の形をした耳飾りを取り、女王は続けた。
ミカナ「これは人魚国の国宝・【人魚ノ涙】というもの。『逆時震盪』の際に引き起こされた全国民の恐怖と悲しみが、【人魚ノ涙】の力を発動させた。」
アサク(悲しむ)「今目の前の女王陛下も、ここにきてから見た人魚たちもみな……【人魚ノ涙】の力によって保存された魂ですね……」
イリアがもうこえずに泣き出している。
ミカナ「心優しき精霊、アサクよ。わたくしは、ユリアとフルフィの愛を、婚約を認めぬわけではない、できぬのだ。そうさせてしまったら、ユリアも民もみな、国が滅んだこと、自分がもうこの世にいないことを思い出してしまう。どうかこの秘密を、守っておくれ」
二人は涙を流しながら頷いた。
ミカナ「芝居でもよい。フルフィを破り、ユリアと結婚し新たなる国王になって、民に希望を与えてやっておくれ。そしたら【人魚ノ涙】も役目を遂げ、人魚国は幸せ満ちる中で消える。これがわたくしの最後の願い、手伝ってくれるかい」
アサクは黙ったまま頷き、イリアが王城に響き渡るくらい大泣きをした……
三日後。
人魚国のコロシアムは人で賑わっている。ほぼ全国の人がここに集まって、人魚の姫君の夫を決める試合を楽しみに待っているのだ。
用意を済ましたアサクはゆっくりと、会場へ続く廊下を通り、コロシアムに入る。
第五章:幸せの微笑み
神説年暦36722年 8月22日 木曜日 午前十時
ほぼ全国の人が集まったコロシアムでは、熱烈な歓声が上がっている。今日の試合で、ユリア姫の夫となる、新たなる国王が決まるのだ。みなの期待の中で、試合が始まった。
アサクとフルフィはリングの中央に立っている。すでに対峙する二人だが、表情から気持ちの差がうかがえる。今にも暴れ出しそうに興奮しているフルフィに比べて、アサクはどこか悲しみを漂う感じだ。アサクが女王に一目をやると、女王が軽く頷いた。その左には泣き止まないユリア姫に、右がイリアが座っている。
法螺貝を吹き鳴らす音がコロシアムに響き渡り、試合開始!
フルフィが手にエネルギーで形成された槍で襲い掛かり、アサクはゴーストカードと魔獅子の力で武装状態で構える。【日輪ノ剣】と【光ノ槍】がぶつかり合い、火花を放つ。一進一退の攻防戦はどちらも譲らない気合だ。この時、フルフィが“光剣魔法”で攻め寄せてきて、驚いたアサクはすぐ左手のシールドで防御した。
アサク「! 見間違いじゃねえよな、あれは俺の光剣魔法だよね?」
魔獅子「はい、確かに、光剣魔法です」
フルフィ「あれ、おかしいな。アサク、お前魔法が得意じゃなかったっけ?なんで剣ばっかり使うんだ?魔法はどうした?」
アサク「う……」
ゴーストカード「マスター! このフルフィ、なぜか懐かしい気がします。きっと僕たちが知ってるものです。」
フルフィ「面白くなってきたな。んじゃ、遠慮なくいくぜ!」
手のひらからどんどん光剣魔法を打ち、同時にアサクに向かって突進して【光ノ槍】を突き刺す!
アサクは右手に持つ【日輪ノ剣】で【光ノ槍】を受け止め、左手に正三星陣魔法を自分に向かってきた光剣を吸収しようとしたが、三発までしか容量がなく、やはり何発はくらってしまった。そして体を捻り三星陣魔法“極光聖破”を出した!この攻撃を予想できなかったフルフィは間一髪でこの攻撃を避けたが、余裕を与えずに続いて【日輪ノ剣】を振って出された“陽輝閃撃”の挟み撃ちについに負傷、慌ててアサクとの距離を引き離した。
フルフィ「やるじゃないか、でも光属性の魔法攻撃は、同じ属性の俺には効果が出ないぞ。吸収での反撃だけじゃ、俺を倒せない!」
そういって、真っ白な長い髪を持つ精霊の少年の姿が歪み、巨大な白いキツネと変身した!そして周りに同じく白いコギツネが何匹も一緒に現れた。
アサク「うっ、俺キツネ苦手なんだけど……」
コロシアムに悲鳴があちこちから聞こえてくる。人魚国の人たちが逃げ回り、愛する人が異形のものに変貌したのを目の当たりにしたユリアは恐怖で戸惑っていると、これそこがフルフィの真の姿だと女王に告げられ、騙されたと思わず涙がこぼれる。
巨大な体と尾を駆使して攻撃してくるフルフィ。魔法による攻めも止まらず “星雲貫通銃”を出した時、アサクはゴーストカードと魔獅子を離して、両手同時に正三星と逆三星陣魔法を発動し、フルフィが放つすべての光の矢を吸収した。
空中に高く飛んで、両手の手のひらを合わせて、左には正三星の陣、右には逆三星の陣、天地印結!両手の陣魔法が一つになり、光の六星陣魔法を放つ!!
アサク「霸・極光殺陣!!」
全方位からの光剣がフルフィに襲い掛かった。同じ属性だと効果が弱まるが、無数の剣陣でフルフィがバランスを崩したそのすきに――
アサク「こい!【日輪ノ剣】!」
ゴーストカードが変身した【日輪ノ剣】を右手に握って、フルフィの頭の上に飛び乗り、剣のさきを脳天に打ち込みとする時、魔獅子が突然アサクを止めた。
アサク「魔獅子?」
ゴーストカードも変身を解けてアサクにやめるように願った。
アサク「なんで止めるんだ?」
ゴーストカード「フルフィが誰なのか、まだわからないのですか、マスター」
その時、力尽きたフルフィが倒れて、本当の姿――一匹の小さな白いキツネに戻った。
イリア「かわいいですわ!」
ユリア「その姿なら、いいかも……」
女王の睨みで二人はすぐ口をつむいだ。
フルフィ(アサクに跪いて)「強きものに従いしもべとなりて、われここに契約を結ぶことを誓う」
そしてフルフィの体が無数の光の粒子になり、アサクの手のひらに集中すると、ゆっくりと槍の形になった。
アサク「これは…【光ノ槍】だ! 俺が小さな頃に失くしたあの【光ノ槍】だ!」
【光ノ槍】を高く掲げて勝利のポーズをすると、コロシアムに喝采が沸いた。
ミカナ「これにて、アサクを我が国の新たなる国王、わが娘・ユリアの夫となる。さあ、みなのもの、祝言の用意じゃ」
夜、用意された部屋で休むアサクたち。
アサク「あの時、精霊界の『嘯きの谷』から人魚国に流されてたんだ。で、震盪の影響で【光ノ槍】の封印が解かれて幻獣の姿を取り戻したあなたは、ユリア姫に一目惚れして、精霊に成りすまし恋人になった。」
フルフィが黙って頷く。
イリア「だからユリア姫を連れだして、最後くらい幸せになってほしいと思ったのですね。」
フルフィ「……(泣き出す)」
アサクがフルフィの手を取って言う。
アサク「あした、一緒に人魚国を幸せにしよう」
アサクの言葉を聞いて、フルフィは我慢できずに大きく泣き出した。
イリア(フルフィを抱きあげる)「泣かないで、よしよし、フルフィ、イリアとお友達になりましょう」
翌日、盛大な婚礼が行われた。華やかなヴァージンロードを歩くアサクとユリア。傍らにいるイリアの笑顔が、なぜか少し引きつっていた。
女王自らアサクに栄光ノ指輪を付けて、新しい国王の誕生を告げる時、人々は楽しい歓声を上げながら、満面の笑みでありがとうと言い、一人また一人、ゆっくりと消えた。女王がアサクの手を、ユリアがフルフィの手を握りしめ、微笑んで感激を伝えると、耳に飾っている【人魚ノ涙】がひび割れ、二人もゆっくりと姿が消えてゆく。完全に消える前に、女王がアサクにこう言った。
ミカナ「130年前のあの人魚島へ行くがよい。王座に隠してある【人魚ノ涙】を探したまえ。それは幻獣界三大神器の一つ、必ず探し出し、わたくしに届けておくれ」
アサク「届けるって、どうやって??」
女王に聞こうにももう完全に消えて、人魚国にはもう生気が少しも感じなくなって、結界が消滅するとともに、海水が入ってきた。
アサク「ヤバい! 城が水没しちまう! とりあえず地上に逃げよう!」
ゴーストカード「結界が消えたから【折畳ノ廻廊】もう使えるはずです!」
イリアがすぐ【折畳ノ廻廊】を使い、みなを伝送した。
神説年暦36722年 8月24日 土曜日 午後三時
震盪によって再び出現した130年前の人魚島に到着したアサクたち。コアがもう封印されたので、大して強い魔物がいないし、雑魚を片付けていくと、王座の下に【人魚ノ涙】を無事見つけることができた。
アサクは【人魚ノ涙】をペンダントにして、フルフィにつけた。彼はペンダントを握りしめて涙をこらえながら誓う。
フルフィ「……今度こそ、必ずユリアを守って見せるよ」
指に付けられてる栄光ノ指輪をみて、アサクが呟く。
アサク「俺、結婚しちゃったんだな」
イリア(心)「本当に結婚したわけではないのに、なぜかお兄さんが取られた気がします。イリアが落ち込む理由なんか、ないはずのに、この気持ちは……?」
イリア(涙目でアサクに抱きつく)「イリアはずっとお兄さんと一緒にいます。イリアを一人にしないで」
アサク「? どうした? 大事な妹を置き去りにするはずねえだろう。よしよし」
イリア「イリア、お兄さんが大好きです。お兄さんのお嫁さんになるのはイリアだけですよ!」
アサク「え?」
一瞬、沈黙の時間が流れた。
話を変えようとゴーストカードが言う。
ゴーストカード「これからどうします? マスター」
アサク「俺がエデンの村に向かう前に、すでに妖精界の時間図書館で『逆時震盪』が起きていた。そして、今回の人魚国、正直ショックだよ……妖精界の現状が気になる。だから妖精界へ行こう、もしかしたら時間図書館でなにか新しい手がかりが見つけるかも」
一同「うん!」
【折畳ノ廻廊】を開いた。アサク、イリア、ゴーストカード・ウダ、魔獅子・サモエドに新たに加えた幻狐・フルフェ、一行が次なる目的地・妖精界へ向かう。
第六章:矛盾たる真義宝典
神説年暦36722年 8月28日 水曜日 午後七時
アサクたちが妖精界に到着するものの、妖精の森に迷い込み、どうしても妖精王国にたどり着けない。
アサク「妖精界の結界って厄介だな、まるで迷宮みてぇだ。どう歩いても出れねえし、【折畳ノ廻廊】で直接伝送もできない。これじゃいつまでたっても時間図書館にたどり着けねえぞ……」
新しくできた友達のガガ鳥を肩に乗せて、イリアも疲れた顔でいう。
イリア「もう歩けません……少し休憩しましょうよ、お兄さん」
フルフィ「腹減ったー」
アサク「しかたない、キノコを採ろう」
フルフィ「ええ~来てからずっとそれじゃん……」
その時、おいしい匂いがどこから漂ってきた。たどってみると、池の近くに美味しそうな鍋が出来上がっている。
アサク「いい匂いだ!」
フルフィ(マイ食器を取り出して)「準備万端! 食べよう」
アサク「持ち歩いてんのそれ」
フルフィ「みなの分もあるぞ~」
ゴーストカード「盗み食いはよくありません……」
イリア「ひ、一口だけなら、大丈夫ですよね、本当にいい匂い……」
魔獅子は何も言わないが、腹の虫は誠実だ。
おいしい匂いの誘惑に負けて、みなにして “おいしい、アツアツ”と言いながら食べ始めて間もなく、一人の巨漢の怒鳴り声が響く。
巨漢「こら! 盗み食いめ!」
が、アサクと目が合う瞬間――
アサク「カーバン!」
カーバン「アサク!」
二人は古き友と久々再会した嬉しさに抱き合った。そしてゴーストカードと魔獅子にも。
カーバン「まさかまた精霊の守り神たちに会えるなんてな。会いたかったぞ!」
イリアも嬉しくてカーバンに抱きついた。
イリア「これ、カーバンさんが作った野原スープだったんですね!通りでおいしいわけですわ~」
アサク「無事でよかったよ~カーバン」
カーバン「俺先月に火族製錬師の修業を遂げるための素材集めをしに、精霊界から幻獣界に行ったんだ。帰ろうとしたら精霊界が丸々消えた感じでなぜか帰れなくて、連絡しようにも手段がないから、妖精界で何かわかるかもって思って。そんで今食いしん坊のお前らと会ったわけだ。な、精霊界に一体何があったんだ?」
アサク「……カーバン、落ち着いて聞いてくれ」
そしてことの顛末の説明を聞いたカーバンが、力が抜けたように座り込んで、またすぐ起き上がってアサクの胸元を強くつかむ。
カーバン「じゃあみんなは? 他の精霊たちは今どうなってる??」
アサクはカーバンの手が離すようにつかんで、俯いてゆっくり口を開く。
アサク「無事脱出した人がどれくらいいるかわからない。今のところ、俺たちが会えたのは、あなただけだ……」
カーバン「……くそ!」
悲憤に満ちたカーバンの拳は、一発で軽々しく森の木々を殴り折った。
ゴーストカード「カーバンさん、どうしたら妖精王国に入れるかわかりますか?」
カーバン「知ってる。でももう日が暮れた。妖精王国を覆う結界が夜になると無限ループの迷宮になる。王国へ続く道は昼でしか現れないから、日が昇るのを待つしかない」
イリア「本当に迷宮だったんですね。お兄さんが方向音痴だからとばかり思いました」
フルフィ「待つしかねえんだろ?明日のためにも今は腹ごしらえして休もう」
アサク「そうするしかないようだ」
魔獅子「みなさんは休憩を。夜番は自分に任せてください」
カーバン「そういえば、この白いキツネって誰だ?」
アサク「幻獣になった【光ノ槍】だよ」
カーバン「ええ~~、ちょっとアサク、お前、まだ何か隠してねえか?」
アサク「横になりな、ゆっくり話すよ」
神説年暦36722年 8月29日 木曜日 午前八時
朝、アサクとカーバンははっきりと目の下にくまがついてる。一晩中人魚国の出来事をしつこく聞いて、二人とも一睡もしなかったのだ。
ゴーストカード「お二人さん、一晩中ずっと話し込んでてうるさかったですぞ」
魔獅子「同意」
アサク「しつこく聞いてくるカーバンが悪いんだぞ」
カーバン「だってさ、まさかアサクが結婚するとはな、人魚国の国王にまで……それに、あんなのあんまりだよ……」
アサク(軽く肩を叩く)「丸一夜感傷に浸っててもういいだろ? はやく妖精の村に連れていってくれ」
荷物をまとめて、カーバンに続いて森に入り、しばらくして、一つの吊り橋に着いた。
カーバン「この先が妖精の村だ」
村に入ると、そこにはもうひどい光景になっている。
妖精界の東北方向、つまり時間図書館が位置する方には、険しい炎が燃え上がっていて、どうやら魔物が出てこれないように囲んでいるらしい。城下町あたりが戦闘の跡がみられるが、幸い損害が大きくないようだ。
村の妖精たちはみな疲れた様子で、その中に怪我人もいる。アサクをみると、すぐ慌てて知らせに人を出した。
村の妖精「早く女王陛下にお知らせを! 精霊界のアサク様が来てくださったぞ!」
一人若い妖精が駆けてきてアサクに話かける。
若い妖精「アサク様、待ってました! 早く王城にお越しください。女王陛下がお待ちです」
アサクたちが妖精王城に案内され、妖精女王・ルナミアに謁見することになった。
途中に見る正殿がひどく損傷であちこちボロボロになっていて、妖精女王もひどい怪我を負い、寝室に寝込んでいる。寝台のすぐそばまで案内されると、女王に付き添う侍女の一人が、カーバンに飛び込んで泣き出した。
カーバン「俺たちが来たからにはもう大丈夫だ、サナ、心配するな」
アサクとイリアはもう一人の侍女の傍に。
イリア「サヤお姉さん、大丈夫ですか。」
アサク「事情を説明してくれ」
サヤ「二ヶ月ほど前、時間図書館の中央ホールに見たことないコアが現れ、たくさんの魔物が出てきて……女王陛下がすぐ兵を向かわせたんだけど、翌日に急に強烈な震波が起きて、図書館一帯の景色が変わったし、そこにいたはずの人々もみなどこかに消えて……それからすごくでかい岩石巨獣が図書館の外壁に登り出ると、まるでそれが合図みたいに、魔物が外に拡散して周りを攻撃し始めたんです。村がもちろん、王城も免れなくて、最後に女王陛下が古代神器【火竜ノ斧】を異変の境界線に刺して炎ノ結界を張ってやっと、魔物を閉じ込めることができました」
サナ「境界線を越えた魔物を辛うじて退治したけど、それで女王陛下に怪我を負わせてしまいました……守り切れなかった私たちが悪いんです……私……」
そう言ってサナまた泣き出す。
アサク「今すぐ時間図書館に向かって魔物を消してくるよ。でもあなたたちはついてくるな。逆時震盪の影響を受けないのは精霊である俺たちだけだから」
その時、妖精女王が目を覚ました。侍女の二人はすぐ女王の傍にいって、起き上がるをの支えた。
ルナミア「精霊界での出来事はもう、夢を通してすべて知った。これは巨大なる陰謀である。敵が時間図書館を狙った理由は歴史を歪ませること。おそらく図書館で巻き戻された時間の記録は消えてしまったのだろう。どうかそこにある【真義宝典】を探し出して、わらわに届けてほしい。まだ修復できるやもしれぬ」
サヤが一つの水晶玉を取り出してイリアに渡した。
サヤ「この水晶は君たちがいるところの様子を映してくれます。これで【真義宝典】を探すのを手伝います。」
イリア「水晶でこんなことができるなんて、すごいですわ」
アサク「一刻も争う事態だ、出発しよう」
サナ「ご案内いたします」
神説年暦36722年 8月29日 木曜日 午後十二時
みなは【火竜ノ斧】を刺したところまできた。
サナ「一緒に入れないから、私はここまでです。どうかお気を付けて」
カーバンが【火竜ノ斧】に向かって言う。
カーバン「カイネ、お前まだやれるか?」
が、【火竜ノ斧】からなんの返答もない。
カーバン「どうやら炎の結界に集中してるらしい。邪魔しないでおこう」
アサク「でも、どうやって入るんだ?」
カーバン「俺は火の精霊だぞ、任せろ。 (両手を前に掲げて)陣防術・赤焔ノ壁」
カーバンがそう唱えると、火で構成された壁が結界の炎をかき分けて、時間図書館まで道が現れた。
【不帰ノ羅針盤】で測ってみると、なんと、1500年もの年月が巻き戻されたのだ。
アサク「1500年も? なんでそんなに昔にまで……とりあえず今は、中にあるコアを封印して魔物を消すのが先だ。いくぞ!」
火の道を通り、無事にホールまで着いたが、やはりそう簡単にはいかず、図書館の外壁にいた岩石巨獣が、魔物をつれてコアを守りにまた戻ってきた。
ふと気づくとイリアの隣が三尾猿になっている。
アサク「友達変えるの早すぎだろ」
イリア「ガガ鳥は火が苦手なんです。だから三尾猿に付き合ってもらうことにしましたの」
アサク「逆時震盪した空間に入って無事でいられるのは俺たち精霊だけなんだろ。なんで三尾猿を連れてこれたんだ?」
三尾猿がなぜかイリアと同じ淡いピンクの光を発している。
ゴーストカード「僕と魔獅子がこの空間に入れたのは、マスターとの主従関係でマスターの精霊の力で守られているからです。今三尾猿もイリアさんと主従関係になったから、同じように守られていますよ」
イリア(三尾猿を抱いて)「怖がらなくてもいいですよ。イリアお姉さんが守ってあげますわ。一緒に冒険しましょう」
アサク「あっそ。早いとこ用事を済ませようか。イリア、あなたはカーバンと水晶玉を持って【真義宝典】を探してくれ、戦闘中に壊れたりしたら大変だ」
カーバン「おう。イリアちゃんを俺が守る。任せろ」
そして魔獅子を召喚して魔装に変身させて防御を整えるが、ゴーストカードが【日輪ノ剣】に変身できない。
ゴーストカード「図書館の中では日の光が弱すぎて変身できません。このままフォローにまわります」
フルフィ「じゃ俺が!」
そういって【光ノ槍】に変身。槍を手に持つアサクは一振りして嬉しそうに言う。
アサク「この感覚、懐かしいぜ! 一緒に戦うのも久しぶりだな。星雲貫通銃!」
すぐ技を出して岩石巨獣と戦い始めた。
一方、イリアは水晶玉を通し、サヤの誘導を頼ってカーバンと一緒に【真義宝典】を探す。邪魔する魔物を、カーバンは図書館の土属性を利用して“陣防術・石屑爆撃”で打ちのめし、やっと宝典にたどり着けたが。なんと、コアの出現場所が、宝典の真上だ。
カーバン(叫び)「アサク! 宝典を見つけたぞ! コアもここだ!」
三尾猿が隙を見て宝典を取り出して、イリアに渡した。襲い掛かる魔物はカーバンが相手している。
岩石巨獣との戦いがどうもうまくいかない。防御が硬すぎて、傷一つまともに与えられないでいるアサク。
アサク「かたっ!これじゃ倒せそうにないぞ」
フルフィ(半泣き)「いたたた! 壊れる! 俺壊れちまうよ~~」
岩石巨獣の強力な一撃で、アサクとゴーストカードがぶっ飛ばされた。
魔獅子「マスター、申し訳ございません。もう…」
言い終わらないまま、魔獅子の変身が解けてしまい、地に転んで、傷だらけになっている。
アサク「倒せないなら策を変えよう。動けないようにして、先にコアを封印すれば、こいつも消えるだろ!」
フルフィ・ゴーストカード「どうやって??」
ゴーストカード「あっ! (フルフィをみる)光をください!」
フルフィ「! なるほど! その手があったか!!」
ゴーストカードが【光ノ槍】からの強い聖光を浴びて変身し、融合して【天斬のエクスカリバー】となった。【天斬のエクスカリバー】で岩石巨獣を射ぬいて壁に釘付けた。
魔獅子に乗ってコアのところに駆け付けて、【聖獄ノ籠】で封印すると、魔物が一斉に消えた。やっと一件落着と放心して、みんな力尽きで地に倒れた。
妖精王城に戻り、宝典を女王に渡すと、女王は妖精界の生き残った記録士を集めて、過去1500年分の歴史を再び宝典に書き込んだ。が、そこに一つ重大な矛盾を、女王は気づいて、すぐアサクたちを呼んだ。
ルナミア「この世のあらゆる命・物・出来事を記録している【真義宝典】は、間違いはないし、不足もあってはならない。だが……」
アサク「どうしましたか?」
ルナミア「……そなたに関する記述が、一切ないのだ。つまりはアサク、そなたがこの世に存在しないことになる!」
まるでこの言葉を合図のように一瞬周りの空間が歪みだして、それが消えた時には、人々の顔色が何やら違うように見えた。
サヤ「あなた誰ですか! 勝手に踏み入れるなど許されませんよ!」
サナ「侵入者がいます! はやく女王陛下をお守りください!」
ルナミア「この無礼者、わらわの寝室とわかっての所業か」
アサク(慌ててカーバンに)「俺のことわかる??」
カーバン「もちろん」
アサク「イリアは?」
イリア「大好きなお兄さんを忘れるわけありませんよ」
アサク(魔獅子・ゴーストカード・フルフィに)「あんたたちは??」
魔獅子「覚えてます」
ゴーストカード「覚えていますよ」
フルフィ「覚えてるぞ」
アサク「じゃあ、いったい何が……」
女王を守るべく妖精の禁衛軍が駆け付けて叫び出す。
妖精兵士「侵入者を捉えろ!」
カーバン(サナに向けて)「俺のことわかるかい?」
サナ「? カーバンさんでしょう? あなたとイリアちゃんがいてくれたおかげで、コアの魔物を退治できましたわ」
カーバン「どうなってる? そうじゃないんだ、こいつが俺の仲間のアサクだぞ??」
ゴーストカード「とりあえず逃げましょう、マスター」
奇妙な状況で仕方なくカーバンとイリアをその場に残して、魔獅子がアサク、ゴーストカードとフルフィを乗せて窓から寝室から逃げ出した。魔獅子の背に乗って逃亡するアサクは、複雑な気持ちで遠く眺める。
アサク「それじゃ俺は、誰だ?」
to be continued~
google play 圖書『アサク伝X真龍の魂』
同時也有260部Youtube影片,追蹤數超過24萬的網紅神王TV,也在其Youtube影片中提到,YouTubeは、今から始めても遅い!? ですが、それでも「今年中に結果を出せる! 稼げる!」2つの方法について解説 専門分野に特化しよう! 目指すべきは、マスのパイがありつつ、かなり尖った専門チャンネル 古代エジプト文明やピラミッドは、世界ふしぎ発見やNHKでも今でも特集されている、視聴者の需...
潜在意識 自分を愛する方法 在 兄貴 (丸尾孝俊) Facebook 的最佳解答
【南海のオラフ日記とは⁉️】
2019年6月1日〜7月28日の約2ヶ月間、
埼玉県出身の宮田莉奈さん(24)は
第88期生 異文化交流生として
兄貴邸に滞在しておりました。
どんなことをして過ごし、
兄貴と一緒に過ごす中で何を学んだのか❓
ありのままを書き起こしてくれている記事を
1話〜10話まで一挙にシェアさせて頂きMAX(^^)
兄貴にお会いした事のある方もない方も
莉奈ちゃんの目を通して
より伝われば幸いです😊🙏🏻
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⭐️第1️⃣話⭐️
〈異文化交流生に応募したキッカケ〉
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まずは、簡単に私の自己紹介をさせていただきます!
1995年6月23日生まれ、蟹座、B型の
宮田莉奈です。
兄貴にアナ雪のオラフに似ていると言われてから「南海のオラフ りな和僑」と名乗らせていただいています🥕笑
私の小学生の頃からの夢は、パリコレのファッションデザイナーでした👗✨
※今でもお花のワンピース専門店を作りたいとう夢を持っています🌼
高校卒業後はファッションの専門学校に行くものの、成績が良くなかったので、夢を叶える方法を知るべく、自己啓発本を読み漁りました。
ある日、本に挟まっていたチラシを見て、セミナーに参加しました。
その後、人誘われたセミナーには参加するようになり、いろいろと勉強する中で「自分がやりたいことはファッションではない」と悟り、両親に泣きながら土下座して、専門学校を退学しました。
まずはお金を稼ぐため、平日は掛け持ちでアルバイトをして、土日はセミナーに参加する生活をしました。
来るもの拒まずセミナーに参加したところ、半年で500万円の借金をしました。
その後、ご縁あってセミナー会社に拾われ、
営業、マーケティング、司会、講師等、様々な仕事に携わらせていただき、借金を完済しました。
セミナー会社退職して、一般企業で正社員をしていましたが、5月に退職して、異文化交流生として、兄貴のところへ行きました。
兄貴のことは、セミナーで知り合った知人から本を紹介されて、4年前から知っていました。
ずっと会いたいと思っていたものの、旅費を貯めることがなかなかできずにいました。
ある日、Facebookを見ていたときに、
異文化交流生募集の記事を見て、衝撃を受けました!
「兄貴のところに2ヶ月も滞在できる!しかも、無料!!!!」
兄貴の近くにいさせていただくだけでも、最低数百万円はお支払いしないといけない気がするのですが、渡航費、住居、食事も出していただけるという素晴らしすぎる企画に全然理解しきれませんでした。
こんなチャンスは二度とない!!と思い、急いで応募しました。
無事、異文化交流生のして行けることが決まったときは、兄貴のファンである両親と共に飛び上がって喜びました!
「何が何でも兄貴の生き方、在り方、考え方を吸収し、より良い人間となるぞ!」という思いで、いっぱいでした。
兄貴のところへ行く直前の有給休暇では、兄貴の本を読み、質問を考え、料理をして、インドネシア語のCDを聴いたりして、有意義な2ヶ月を過ごせるよう準備をしました。
※この準備が全然甘かったことに後に気づかされます泣
さぁ、いざ出発!
初めての1人で海外へ長期滞在、かつ念願の兄貴にお会いできることに期待と不安が激しく押し寄せ、ずっと落ち着くことはありませんでした。
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⭐️第2️⃣話⭐️
〈兄貴とご対面〉
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いつも飛行機に乗るときは映画を観ることが多いのですが、今回は日本で読み終わらなかった兄貴の本を読むのと兄貴への質問を考えるので、必死でした。
気がつけば、日本から7時間半のフライトはあっという間に終わっていました✈️
まずは、荷物を受け取り!
なんと、2番目に出てきて、ここはスムーズ✌️
次に、不安を抱えながら初めてのビザの手続きへ!
VOA (Visa On Arrival)の小さなボックスに座っているお兄さんにお金を払ってビザを購入。
それから、VOA (Visa On Arrival)カウンターの列へ行き、紫色のシールをパスポートに貼ってもらい、なんとかビザが取得しました✌️
※全然難しくないので、ご安心ください✨
そこで、受付のお兄さんに「どこに行くの?」と聞かれたので、「日本人の兄貴のところ!知ってる?」と言ったら、「もちろん知ってるよ!」と言われました。
このとき「やっぱり、兄貴は有名人だな…。」と改めて実感しました。
それと同時に「そんな有名な兄貴に私は本当に会えるのだろうか?きっとお忙しいから、異文化交流生が話す機会はあんまりないかなー。」なんてことを考えていました。
私が空港から向かった先は、西部にあるムンジャンガンジャングルリゾートというホテルでした。
ドライバーのマデさんに空港から約4時間、ホテルのロビーまで送っていただいた後、私は窓のない二階建ての車に乗り、真っ暗の山道をまあまあ揺られながら、登って行きました。
「か、か、完全に怖い…😭😭😭」
「こんな山奥に本当に兄貴はいるのだろうか?修行とかするのかな?」
全く様子がわからないまま、
気がつけば到着しました。
「ん??大きな家??」
オレンジ色のあたたかいランプに照らされたウッド調の立派な建物は、山奥の別荘という雰囲気でした。
スタッフの方が「マルさん、リビング!」と言って、ドアの前まで案内してくれました。
さぁ、いよいよ…
ガチャ。
「こんばんは…!」
わ!!本物の兄貴だ!すご!
本当に上半身裸だ!!本当にあぐらかいてる!わー!タバコ吸ってるわー!! !
もう目の前に兄貴がいることが、びっくり!という感じでした😲✨✨
うわぁー、そして3人の美女がいました😮ま、眩しい…✨
この瞬間、もう私の頭は完全に真っ白、緊張マックス、落ち着かないこの気持ちをどうしていいのか、全くわかりませんでした。
部屋に入ると、うちの2倍はあるテレビ、モダンなふかふかソファ、シンプルでスタイリッシュなキッチン、三角屋根の高い天井…。
視界に入るものが全て豪華でした。
そして、元気な洋楽が響き渡っていました。
「おう!よう来たな!ご苦労さん。ここ座りー。」
「あ、は、はい…。」
おー、遂に私は兄貴に声をかけていただいたのか…😆!!!
深夜12:00過ぎ、この大自然溢れるおしゃれな空間に兄貴と美女3人と一緒にいることがもう違和感でしかありませんでした。
この3人の美女は、秘書のひろさんとゲストリレーションのまなみさんと異文化交流生のひなのさんです。
「どこから来たん?簡単に自己紹介してやー。」
完全に調子がおかしくなっている自分を振り絞って、、、
「えっとー、名前は宮田莉奈です…。」
どんなことを話したのかは覚えていないけど、恐らくまともなことは言えていなかっただろう…。
次に「何か、質問あるかー?」と聞かれました。
あー、いっぱいある!ある!!!
ヤバいー、完全に全部吹っ飛んだー😫
焦る私は、必死に質問メモを見て、
兄貴へ質問をしました。
※兄貴にお会いするときは、事前に質問を準備しておくことがオススメです⭐️
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⭐️第3️⃣話⭐️
〈初めての兄貴への質問〉
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私はファッションデザイナーになる夢を叶えるべく、小学校5年生のときに初めて「夢をかなえるゾウ」を読み、それ以降、自己啓発本を読み漁りました。
19歳のときに初めてセミナーに参加してから、そこそこお金を使ったので、たくさんのことを学んだのだと思います。
ただ、自分が学んだことをどれだけ実践できているのか、と言われると大してできていないし、やりたいことはいろいろとあるけれど、どうしていいのかは全くわかりませんでした。
兄貴へ質問したいことは盛りだくさん!!
スマホのメモを開いて見ているのに
質問が全然頭に入って来ず、
とりあえず、簡単にできる質問をしました。
今まで、有名なコンサルタントや億万長者と言われる人を何人か見てきましたが、個別にお話するのに5分で10万円なんて、よくある話で、1時間で1億円のコーチなんかもいました。
そんな中、兄貴は無料でこの瞬間は、私のために貴重な時間を割いてくださっていることが、本当に信じられませんでした。
深夜2:00頃、相変わらず上半身裸の兄貴は、
あぐらをかき、タバコをふかして、真剣に私の質問に耳を傾けてくれました。
Q,「幸せ」って何ですか?
A,「幸せ」とは、日々、毎日自分で身につけてかかるものや。例えば、できなかったことができるようになる、お日様が登っていることとか、些細なことを見つけてかかることで、幸せになる。決して、誰かに与えられるものではない。勘違いするなよ。
Q,物質的豊かさと心の豊かさは比例しなのでしょうか?
A,お前、豊かの意味を履き違えてないか?日本はど貧困や。パナソニック買えるのは豊かじゃない。バリはバナナの皮1つで生きている。困っていたら周りの人が助けてくれる。日本でお金なかったら、生きていけるか?バリだったら、生きていけるで。これが本当の豊かさだと思わへんか?
Q,30年後にIQ10,000のAIができると言われています。私たちは、どのように仕事のスキルアップをしたらいいのでしょうか?
A,AIにないのは、何や?感情と問題解決する力や。人を楽しませる仕事、人の悩みを解決する仕事はなくならないと思わへんか?
Q,お金を使うときは、何を大切にして使っていますか?会社に給料前借りしてでも、人にごはんを奢った方が良いと本に書いてありましたが、それはお金を使う優先順位第一位が「人にごはんを奢る」ということでしょうか?
A,頑張っている人、将来性のある人に奢るんや。頑張ってないやつに奢っても仕方ない。車や家も人が使うから買うやで。自分本位で物は買わないなぁ。とにかく、人のためにお金を使うんやで。
Q,兄貴の目標は何ですか?
A,ないなぁ。目の前にぶち当たることのみや。
Q,兄貴が大切にしている習慣はありますか?
A,常に人に合わせること。自分が大切にしている習慣はないんや。よく人を見て、自分の興味ないことに興味を持って話を聞くのが大切なんやで。
今まで、いろいろなセミナーで学んできたことは全然違う回答の数々に、ただびっくりしていました。
それと同時に、兄貴の思考、価値観、物事の捉え方、在り方を完全に吸収することができれば、どこでもやっていけるだろうと思いました。
慣れない環境で緊張マックス、部屋に戻った時には一気に眠気が‥‥
やっとの思いでシャワー浴び、
人生初のお姫様ベッドを味わう余裕もなく〜夢の中へ〜
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⭐️第4️⃣話⭐️
〈兄貴の運転する車に乗る〉
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午前10時30分
ピピピピー、ピピピピー。
鳥のさえずりで目覚めた朝。
なんて贅沢な朝なんだろう。
ベランダに出てみる。
見渡す限りの大自然が飛び込んできた。
どこまでも広がるキラキラキラ輝く海。
雄大で穏やかな山々。
そしてこの風。
全身を包み込み心を浄化してくれるような心地よい風。
気持ちいい〜〜〜‼️
この絶景と大自然を独り占めしていることが、とても贅沢で優雅なひとときでした😊
お昼にホテルを出て、兄貴の運転で、私たちはお昼ごはんへ向かいました🚘
あ、兄貴に車を運転していただけるとは…!!
大富豪なので、てっきり専属運転手さんがいるのかと思っていました。
兄貴は移動中の車の中でも、
たくさんの質問に答えてくださりました。
Q,物事の本質の見抜くことができますか?
A,友だちにたくさんの意見を聞くんや。迷うのが人生やで。例えば、多くの人がAの方が良いと言って、1人だけBが良いと言ったとしても、Bの方が心に響いたなら、Bを採用するんやで。
Q,人の愚痴、批判、中傷等の話を聞くことが嫌いです。どうすればいいでしょうか?
A,そんなんほっとけ。無視すればいいんで。
Q,会社の飲み会が好きではありません。特に飲むことを強要されることや悪口を聞かせられるのが嫌です。どうすればいいでしょうか?
A,行かなくていい。悪口ばっかりじゃないですか!と言って断ればいいんや。
Q,どんなことを言ってもネガティブな人はどうすればいいのでしょうか?
A,そんなのほっとけ。俺だったら変えられるけど、実力ないうちは、ほっとかないと影響されてまうぞ。
Q,兄貴が人生で大切にしているものは何ですか?
A,お金で買えないものや。人は買えないよな、時間も買えないやろ、土地かて買いたい思おたら買える訳ではないよなぁ。そういうお金で買えないものを大切にすることで人生豊かになるんやで。
「お前な、質問する人の立場に立って、質問してるか?ただ、質問するんやなくて、自分の考えを伝えてから、質問するんやで。」
「は、はい…。すいません。」
私はそのとき、全然自分の考えがわからず、急に質問ができなくなりました。
「今日の昼飯は、パドゥドゥのバビグリンや!」
「バビグリンって何ですか?」
「豚の丸焼きや!超うまいぞ!」
え?豚の丸焼き??北京ダックのノリかな?
豚さんがまるっと出てくるのかな?
「豚の丸焼き」というイメージにややビビりながら、どんなが出てきても気合いで食べようと意志を固めてました。
まず、お店に到着して最初に出てきたのは、
みかん水(エスジュル)でした🍊
※「エス」が「冷たい、氷」という意味です。
すっごく甘くて美味しいー‼️
兄貴も甘いものを摂取するんだー😲と思いました! ※甘い物とは無縁のイメージでした笑
そして、いよいよバビグリンの登場✨
良かったー。。。
豚がいろいろな形で調理されていたものがお皿に載っていました。
「お前、辛いの大丈夫か?」
「はい!大丈夫です!好きです🙆♀️」
「いただきますー!」パクっ。
ん?か、から〜い😭😭😭
私は辛い食べ物は好きで、日本では余裕で食べていたのですが、バビグリンの辛さは日本の辛さとはちょっと違うので、ビビりました。
※初めてバビグリンを召し上がる際はお気を付けてくださいm(_ _)m
唐辛子を避けて食べると辛さが半減します。
「お前、辛いんやろー。」
「は、はい…。」
兄貴は完全にお見通しでした😅笑
ごはんを食べ終え、いよいよ兄貴邸へ!
道中、車窓からの景色は、透き通るような青い空と、南国を感じさせるヤシの木々の連続。
やっぱりバリは爽やかーーマックス‼️
兄貴へ質問したいことはたくさんあるのに
自分が考えた質問に対する自分の考えが浮かんで来なくて、ただただ移りゆく景色を眺めていました。
なんか、言わなきゃ!と思うほど、
全然何も出てきませんでした。
せっかく兄貴に質問できるチャンスなのに
時間がどんどん過ぎていくことにただ自分の無力感を感じていました。
ここで最初の大失態…。
車に酔って、嘔吐🤮泣泣
完全に酔い止め飲み忘れたー😭
あのときは、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございませんでしたm(_ _)m
自分の不甲斐なさに更に落ち込みました。
あー、私、2ヶ月もやっていけるのかなー。
漫然と不安ばかりが募っていきました。
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⭐️第5️⃣話⭐️
〈初めての兄貴邸〉
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遂に到着。兄貴がクラクションを鳴らすと扉が開き、車は中へ入っていきました🚘
門を潜って玄関へ向かったとき、目の前に大豪邸がそびえ立っていました。
こ、これは家なのだろうか???
完全にお城だよな…?
日本では小さなマンションで家族3人仲良く暮らしている私には、とても理解し難い広さでした。
可愛い犬たちが駆け寄って、スタッフがお出迎えしてくれました🐶✨
凄すぎる…!!!
全てのものが、で、でかい!!!
ひなのさんにお部屋を案内していただき、ました。
ほほー、玄関から階段を登って、猫ちゃんのいるお部屋を通り、立派な応接間を通り、別棟へ。 応接間からは、立派なプールと海が見えました。
このプールでか‼️
小学校のプールより大きい‼️
まじか!オーシャンビューってやつか🏖!
す、凄すぎる…。
立派な黒いソファを横目に更に奥に進むと私たちの滞在するお部屋がありました。
お部屋にはベッドが2つあり、そこでひなのさんと一緒に生活しました。
ひなのさんには、兄貴邸での過ごし方やゲストが来たときの対応等について、何から何まで丁寧に優しく、教えていただきました。
その後、現地スタッフのみんなに挨拶をして、兄貴邸を案内していただきました。
※この後、兄貴邸が広すぎて何度か迷子になりました笑
ひなのさんは、床に落ちているゴミをさっと拾ったり、ゲストの飲み物が減っていることにすぐに気づいて聞いたり等、気配り、心配りが完璧で、テキパキと爽やかに行動されていました。
私はただそのスピード感についていくことができず、ただぼーっと見ていました。
ゲストのみなさんが帰られて後、私たちはジャグジーで映画観賞🎬
こんな豪華でおしゃれなジャグジーが世の中に存在するとは!!!
真ん中に立派なヤシの木🌴がそびえ立ち、30人は入れる大きなジャグジーは、どこの家やホテルよりも立派でした✨
温かいジャグジーに入ると、急にリラックスしてしまい、何度も一瞬意識が飛びました。
ジャグジーで映画が終わった後、兄貴が口を開きました。
「お前はこの映画が終わるまでの2時間何をしていたんだ?」
……。
「ただ2時間、映画をボーッと観てただけだよな?」
「は、はい…。」
「異文化交流生として過ごす、この2ヶ月は長いようで短いんや。ボーッとしていたら、それで終わってまう。この映画の間、ひなのは何回ビールを変えてくれたか、わかるか?お前は一回も変えてないやないか。」
「はい…。」
「お前、今まで、どのくらい大人から怒られたことあるんや?」
「…。ほとんどないですね…。」
「ないなぁ。わかるわー。親も親戚も会社の上司かて、みんなお前に嫌われたくないんや。だから、何も言わへん。ただな、俺はお前から嫌われても良い人なんや。お前から嫌われようがかまへん。俺は、正直やで。遠回しに何か言うとかできない人なんや。だから、人気あるんやで。」
「ひなの見てみぃ。バッキバキや。お前どうや。ボーッとしてるだけやないか。」
「はい…。すいません。私はどのようなことをもっと意識して、行動すれば良いのでしょうか?」
「自分を薄くするんや。無我夢中で行動するんやで。要は自分が無い状態や。バッキバキに人のためになろうとする意識を持って、行動してみぃ。」
「はい。わかりました。ありがとうございます。」
「今日はもう寝や。死んでまうぞ。」
「はい。お先に失礼します。お休みなさい。」
何にもできない不甲斐なさ、慣れない夜型の生活、自分の未熟さにただ残念な気持ちしか湧いてきませんでした。
ひなのさんの帰国日まであと3日。
本当にひなのさんのような気配りが出来るようになるのだろか‥‥
不安を抱えながら眠りにつきました。
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⭐️第6️⃣話⭐️
〈兄貴邸での1日〉
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お昼頃に起床しました。
携帯のアラームを必死に消し、眠い目を擦りながら、緊張と不安を感じつつ、身支度をしました。
今日も1日頑張ろうー!と。
今日は、初めて丸一日を兄貴邸で過ごします。
最低限やることはあるのですが、基本的に兄貴邸でどのように過ごすのかは特に決まっていないので、自分で決めて行動します。
異文化交流生の目的は2つあり、
1つ目は「バリの親日を深める」ということ、2つ目は「良いお母さんになる」ということです。
現地スタッフと一緒に料理や掃除などをすることで、親日を深め、良いお母さんを目指します。
私は今まで、大して家事を一生懸命やってたことがありませんでした。
家事をする能力を高めるくらいなら、仕事の能力を高める方が大事だと思っていました。
私は基本的にかなり大雑把で、人に対して気遣いや心遣いをしようと意識するよりかは、自分がいつもご機嫌で幸せであることを大切に生きてきました。
よく母にも1つ1つの行動が効率が悪いと言われていましたが、特に問題点だとは思ったことはなく、自由気ままに過ごしていました。
基本的にやることを終え、ひなのさんは机の汚れや床の汚れに次々と気がつき、掃除の仕方を教えてくださいました。
よく、そんなところに気がつくなぁー。
私はただただ関心するばかりでした。
夕方ごろ、兄貴はすたすたすたーっと階段を降りてきました。
私は思わず「おおー!!」と
言ってしまいました。
「お前、なんや。おおーって。」
「あぁ、すいません。」
兄貴と同じ空間にいることがまだ信じられず、思わず驚いてしまいました。
それから夕食の準備が始まり、
兄貴が食器棚を覗いていました。
「おい、食器棚の皿バラバラだから、整理しておけよ。」
「は、はい!!!」
初めて兄貴から指示いただいたので、
早くやらなきゃ!という思いで整理整頓をしました。
夕食中、兄貴から
「お前、食べ物や作ってくれた人に対する感謝がないなぁー。うまい!とかなんか、なんかないのか?もし、お前がお母さんになったとき、無言で食べられるのと、うまい!うまい!って言って食べてもらうのどっちが嬉しいか?」
「うまいって言って食べてもらう方です。」
「そうだよなぁ。じゃあ、お前もやらんとだよなぁ。」
「は、はい。すいません。」
完全に緊張しまくりの私は、とってもとってもとっても美味しいごはんを食べているにもかかわらず、美味しい!とも言わず、ただ無言で食べていました。
日本で友だちと一緒に過ごすときは、オーバーリアクション!といつも突っ込まれる私が、美味しい!の一言で注意されるなんて、
とても情けなかったです。
ゲストの方が帰られた後に、
兄貴へ質問をする機会がありました。
「どうや、今日一日過ごしてみて。」
「まだ慣れない感じで、いろいろなことが全然できていないです。ひなのさんは、細かいところにすぐに気づき行動されていて本当に凄いです。」
「ひなの凄いよなぁー。掃除もバッキバキやし。俺な、ひなのにはあんまり何も言うてないんや。何でか、わかるか?」
「できているからですか?」
「そうや。ひなのは最初からバッキバキにできていたんや。この若さで凄いよなぁ。」
「はい。本当に凄いです。私が全然気がつけなかった汚れている場所とかにもすぐに気がつき、掃除されてるので、本当に凄いなです。私はひなのさんのように気づき、行動できていないのですが、どうすればいいのでしょうか?」
「そうやなぁ。まず「ついで」を意識して行動するんや。1つのことを言われたら、そのことだけをするんやなて、2つ、3つのことをできるようにするんや。要は言われてないこともやるんやで。ついでを意識して行動することによって、短い時間で済むと思わへんか?」
「なるほどー。そうですね!」
「ひなのは、言われていないこともバッキバキにやるやろ?お前はどうや?」
「まだ言われたことしか、できていません。」
「そうやんなぁ。あのな、言われたことをやるやろ。それをやっている間に頭では次の作業をするんやで。そうすることによって、すぐに次の行動に移れるやろ。これで時間短縮や。」
「なるほどー。わかりました!」
「あのな、あと気づけんうちは、まだまだベクトルが自分に向いているやで。もっとベクトルを相手に向けるてみぃ。そうすることで、気づけてくるはずや。」
「はい。わかりました。意識します!」
兄貴は全然何もできない私に嫌な顔1つせず、異文化交流生としての過ごし方を教えてくださいました。
ひなのさんの帰国まで、あと2日。
明日は今日教えていただいた「ついで」と「相手にベクトルを向ける」をもっと意識して行動して、ひなのさんの素晴らしいところをしっかり吸収しようと思いました。
ジャグジーに入り、部屋に戻戻った後は、
今日教えていただいたことを必死にメモ。
ベッドに入った瞬間にスコーンと爆睡してしまいました🛏😴💤
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
⭐️第7️⃣話⭐️
〈またもや失態〉
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異文化交流生4日目。
ひなのさんと丸一日過ごせる最後の日。
朝から今まで教えていただいたことのメモをしっかり確認しつつ、わからないことは質問して、ひなのさんが帰国した後も、ひなのさんのようにバッキバキに行動できるよう必死のパッチでした。
なんとなく、1日の流れは理解できたものの、
まだまだ確認したいことは盛りだくさん!
スタッフの名前、犬の名前などの確認や、気配り、目配り、心配りについてなど、とにかく質問攻めさせていただきましたm(_ _)m✨
昨日、兄貴から言っていただいた
「ついで」と「相手にベクトルを向ける」を意識して行動しました。
まだまだ慣れず、どこかまだ緊張してる私は、何をするにも怖気付いていたと思います。
そんなとき…
お盆でドリンクを運んでいたら、
ガッシャーン!!!
スリッパのつま先に躓いて、
ドリンクを全てこぼしてしまいました。
あぁぁー、やっちゃったー。
まなみさんやひなのさんが、
嫌な顔1つせず、片付けを手伝ってださいました。
片付け終わったときに
「兄貴、先ほどはグラス割ってしまって、すいませんでしたm(_ _)m」
「お前、まあまあ鈍臭いなぁ。次から気をつけろよ。」
「はい…。すいません。」
あれ?終わった?
もっと怒られるのかと思った…。
次から気をつけようと!
今日もまた兄貴へ質問する機会がありました。
Q,より良い人になれるよう、成長するためには、どうすれば良いでしょうか?
A,縦社会に身を置くことやなぁ。お前なんか、横社会ばっかやろ?同級生ばっかりと連んでいたって、成長なんかないんやで。持つべきは先生やなくて、怒ってくれる厳しい先輩なんやで。本物を見抜いて実践することが大切なんや。例えば、先輩に厳しい会社を紹介してもらうのとか、いいんちゃう?
Q,お金とは何でしょうか?
A,稼ぐものや。みんな、貯めるとか言う人が多いけど、稼ぎまくっていたら、貯める必要なんかないんやで。
Q,何度も同じ質問をする人がいますが、それはどうしてなのでしょうか?
A,それは、未熟で理解ができないか、自分の中に答えがあって、それを言ってもらいたい人のどちらかや。
Q,やりたことが見つからないから、大学へ行くのは、良くないことなのでしょうか?
A,そもそも鈍臭いよなぁ。中学生や高校生のうちにやりたい方向性くらい見つけとけと思うよ。
Q,兄貴は何か運動とかしますか?
A,運動はしないなぁ。細い人がガンになったりするやん?俺なんて、血糖値で生きてるで!バッキバキ健康やで!お前より健康かもしれないな!!
Q,今の日本の子どもへの教育は、良くないと感じています。私の地元の子どもは、公園でゲームばかりしていますし、将来の夢は「ゲームをずっとできたらいい」とか「サラリーマン」とかです。どのようにして、子どもに良い教育をすれば良いのでしょうか?
A,あのなぁ。そもそも子どもの教育をする前に親が全然ダメなんや。親が変わらないと子どもを変えることはできないんや。
Q,では、どうしたら良い親になれるのでしょうか?兄貴のところへ連れて来るとかるですか?
A,俺のところに連れてきたら、俺がバッキバキに指導したるで。それは、アカーン!とか、パッコーン言うたるわ。
Q,兄貴のところへ連れて来る以外に良い親になれる方法はありますか?
A,良い先輩を持つことやろなぁ。良い先輩に「こないなときは、どうすればいいですか?」とか聞けたらええよな。ただ、今は良い先輩も減ってきてるからなぁ。
Q,つまり、良い先輩がいない人は、兄貴のところでバッキバキに指導してもらったら、良い親になれるってことですよね?そしたら、日本良くなりますよね!
A,そうやなぁ。そしたら、日本良くなるやろなぁ。お前、バッキバキに連れて来いよ!
Q,私、まだまだ至らないところばかりなのですが、どうすれば良いのでしょうか?
A,まずな、ボーッとする時間を減らすんやで。そんで、チャキチャキ動くんや。お前、ボーッとしてるし、おどおどしてるで。何でかわかるか?自信がない証拠や。できないことが恥だと自覚しているからなんやで。できないことをできるようにするのが人生なんや。お前、ネギ切れないよなぁ?ネギも切れない人なんか、嫁もらっでもらえないぞ。向こうのお母さんに離婚させられるわ。そんでな、感覚を鋭くするやで。気づきまくって、気づきの鬼になるんや。そしたら、天下取れるで。バッキバキに行けよ!
こんなにダメなところばっかり言われるなんて、人生で初めて…
私の成長を願って言ってもらえてるから、真摯に受け止めて明日から、また頑張ろうっと!
やっと夜型生活に慣れてきたかなと思いつつ、気がつけば、ベッドで爆睡していました😆💤💤💤
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⭐️第8️⃣話⭐️
〈ひなのさん帰国〉
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異文化交流生5日目。
あっという間にひなのさんの帰国の日となりました。
午後2:00、悲しむみんなに見送られながら、ひなのさんは兄貴邸を出て行ってしまいました🚗
寂しさと不安が襲う〜
でも、感傷に浸ってはいられない。
異文化交流生は私一人。改めてバッキバキにやろうと決心しました。
とにかく、いろいろなことに気がつけないので、もう何度も心の中で「ついで、ついで!」と唱えながら、汚れているところを見つけたら掃除🧹して、いろいろなことに意識を向けました。
やることはちゃんとやれているのか、他にできることはないのか、もっと効率的にできないのか、次に何をするのか、とにかく言われたことをしっかり実践することに必死のパッチでした!!
そんな中、兄貴の行動からは、日々感銘を受けて、学ばせていただいていました。
トイレの中でもメッセージの返信をしたり、歩いているときに凄く小さなゴミに気づかれてさっと拾ったり、額縁がちょっとズレているのを直したり、犬の目やにを取ったり…。
気がつくのも速ければ、動きも速く、まさに1分1秒も無駄がないという感じでした。
そもそも、兄貴と私では生きているスピードが全然違うんだな…。
もっと素早く行動できるようにならないと!
時間が過ぎ去るのがとても早く、
気がつけばあっという間に深夜になっていました。
その日の夜も、兄貴に質問ができました😊✨
Q,ディスコで働かれていたときにどうして兄貴のお店は、売上が高かったのですか?
A,お客さんをみんな友だちにしたからやで。友だちやったら、お店来てくれへんか?って頼めるやろ?お客さんでは言えへんよなぁ。だから、常に予約で満席やったんやで。
Q,起業して、失敗する人が多いと思うのですが、それはどうしてでしょうか?
A,あのな、起業したいで起業するから失敗するんやで。起業というのはな、周りから嘆願されてするもんやで。起業は手段や。会社作るタイミングもな、必要に迫られるまでは作らなくてええと思うよ。個人事業主でやって、どうしても会社にしなならんときに作ったらええわ。
Q,どうして兄貴は目標設定をしないのでしょうか?
A,あのなぁ。目標設定なんかしている暇があったら、急いでやった方がええと思うよ。目標設定しているから遅いんや。本当は目標設定したよりも、もっと早く達成するかもしれへんのに、目標設定しているがために達成が遅くなっている場合があるんや。大切なのは、目的をもっと早く達成することやで。
今日もみんなで映画鑑賞をしながら、ジャグジーに入りました。
ゲストのみなさんがヴィラに戻られた後、
兄貴はこう言ってくださいました。
「お前、やるやん。掃除バッキバキやん。もっとボンクラかと思ってたわ。その調子で、明日もバッキバキにいけよ!」
あれ?今、私、褒められた??
「あ、ありがとうございます!明日もバッキバキに頑張ります!」
あぁーーー😭😭😭😭😭
兄貴に褒められたー😭💕
このとき、ずっと不安と緊張の中にいた私は、すっーと解放された感じでした。
本当に本当に嬉しかったです✨
もっと頑張ろう!もっと気づいて行動できるようになろう!と改めて感じた瞬間でした‼️
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⭐️第9️⃣話⭐️
〈掃除の失態〉
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異文化交流生10日目。
ようやく、メモを見ずともいろいろなことができるようになってきました。
日々、可愛い動物たちに癒されながら、
とにかく必死のパッチで掃除マックスでした🧹✨
トイレの洗面台に汚れがあったので、
クレンザーを使って掃除しました。
…。全然落ちないなぁー。
次に漂白剤を使って掃除しました。
んー、ダメかぁー。
最後の手段で、ゲキ落ちくんで擦りました。
やっぱり、ダメかぁー。
それでもダメだったので、金だわしで擦りました。
あれ?なんか、どんどん黒くなってく…!
でも、擦ったら薄くなっていってる!
汚れが落ちていることに嬉しくなった私は、
ノリノリで擦り続けました✨
しかし、完全には綺麗にならなかったのですが、とりあえず掃除が終わったことを連絡しました。
夕食のとき兄貴から、
「りな、洗面台は何で掃除したんだ?」
「クレンザー、漂白剤、ゲキ落ちくん、最後は金だわしです!」
「あー、ダメかもなぁ。ひろ、後でちょっと見てこい。」
あれ?私、やらかしたのか?
夕食後、ひろさんが洗面台を確認したところ、交換しなければならないことが判明!!!
私は洗面台を削って傷をつけてしまっていました。
あぁーーーーーー。
やっちまったぁー😭😭😭
「兄貴、洗面台を交換しなければならなくなってしまい、申し訳ございません。」
「ダッサ。掃除するときは、ネットとかでよく調べてからやるんやで。気いつけや。」
「はい。すいませんでした。」
普通だったら、いくらかかると思ってるんだ。こらぁーーー。くらいのことは言われてもおかしくないのですが、兄貴は失敗を責めたりはしませんでした。
その優しさにふっと涙が出そうになりました。
連日、兄貴のところへたくさんの人が来ます。
どんなにたくさんの人が来ても疲れることは一切なく、バッキバキに質問に答えて、面白さマックス、笑顔マックス、テンションマックスでした。
私と兄貴の年齢差は29歳あるはずなのですが、どう見ても兄貴の方が元気でした💪✨
私の方が若いのになぁ…。
その日も、いくつか質問ができました。
Q,日本人は遺伝子がおかしくなっているとのことでしたが、どうしたら改善できると思いますか?
A,国際結婚をして、他の国から良い遺伝子もらったらええんちゃう。あとはやっぱり、健全な食事やろうなぁ。山に行って山菜摘んで食べるとか、無農薬の野菜を食べるとか、食事を変えたら、だいぶ良くなると思うよ。
Q,好きなこととできることでしたら、できることをやった方が良いのでしょうか?一度きりの人生なので、好きなことをやることも大切な気がします。
A,仕事は好きなことではなく、できることをやるんやで。好きなことで稼げるのは、一握りや。できそうなことをやって、稼ぐんや。好きなことは趣味で留めておいて、好きなことで稼げるようになってきたら、やる量を増やしたら、ええんちゃう?
Q,子どもにはいろいろな人生があり、いろいろな選択肢があることを知ってもらうことはとても大切だと思いますが、どう思いますか?
A,まずな、親がおじいちゃんおばあちゃんに近づけることやな。大昔から継承されていたことを教えてもらうんや。ほんで、中学卒業したら、朝から晩まで必死のパッチで働いたらいいで。丁稚奉公することで、周りが一気に大人になるやろ。それで、成長率が爆発や。社会の勉強をするよりも、社会に出た方が早いと思わへんか?英語の勉強するよりも、アメリカに留学した方が早いやろ?そういうことや!
ゲストのみなさんがヴィラに戻られた後、一服している兄貴に聞いてました。
「兄貴、疲れましたか?」
「ん?余裕や。余裕のプーや。」
あぁー、やっぱり…。
私は一瞬白目剥きかけましたとは、とても言えませんでした😅笑笑
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⭐️第🔟話⭐️
〈楽しんで行動する〉
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異文化交流生13日目。
やることにはだいぶ慣れてきましたが、まだまだ不器用で効率良く動くことはできていませんでした。
もう目の前のことに必死のパッチで、時間があっという間に過ぎていきました。
この日の夜、尊敬する大社長の外山さんに
手招きされ、ビリヤード台の方へ行きました。
え、ええ???
なんか、やらかしたかな??
「今、一生懸命でいっぱいいっぱいなんだろ?」
「は、はい…。」
「兄貴にいろいろと言われて、落ち込んでいるんじゃないのか?」
え!ドキっ…!
「はい。私自身が怒られ慣れてないのも問題だと思うのですが、兄貴やひろさん、まなみさん、外山さんのような素晴らしい経営者の方々がたくさんいて、なんか恐縮してしまうんです。」
「それは自分が未熟で、できないことを恥ずかしいと思っているからだよ。」
「はい…。」
「りな、丁寧にやろうとしているんだろ?丁寧にやらなくていいんだよ?」
「え?丁寧にやらなくていいんですか?」
「あのな、りなはもっと楽しんで行動しなてみな。」
はっ…!!!!
「なんか、一生懸命すぎて重いんだよな。それがみんなに伝わってると思う。いっぱいいっぱいで大変なのはわかるけど、もっと笑顔で楽しんで行動しないと。自分が楽しめないと相手も楽しめないからな。」
う、う、う…😭😭😭
「小さなことに気づいて楽しむんだぞ。今日も花が綺麗だな、バリの空気は爽やかだな、とか小さいことに気づいて楽しんで行動してみな。もっとラクになるから。」
「俺、よくりなの気持ちわかるだろ?プロだからな😆」
「ありがとうございます!頑張ります‼️」
「失敗したら、明るくな、ごめんなさい!次気をつけます!って言ったらいいんだよ。」
「あー。なるほど!ありがとうございます。」
あー。心の氷河が一気にどーっと溶けた感じでした。
この瞬間、一気に心が軽くなりました。
相手にベクトルを向け、人を思いやることがまだまだできていなかったことに気づかされました。
自分がやることを丁寧に完璧にこなすことに必要になって、本当の意味で「どうしたら、目の前の人が喜ぶのか?」ということに全く気がつけていませんでした。
小さな幸せを見つけて感謝する、いつも笑顔でいる、ことを大切にして生きてきたはずですが、本当に目の前のことに必死のパッチすぎて、すっかり忘れていました。
もっともっと笑顔で!楽しく😆‼️
気合いを入れ直して、キッチンへ戻りました🏠
また今日も質問するチャンスに恵まれました✨
Q,営業でお客さんを見つけるためには、どうしたら良いですか?
A,真の営業はな、自分の親や自分の友だちから行くねん。みんな、他行ってまうやろう。それがあかんと思うねんな。まずは身内や。
Q,兄貴がビジネスをやるときにどのようにして戦略を立てたりするのでしょうか?
A,専門家に振りまくるねん。マーケティングなら、その道でずっとやってきたプロがいるやろ?そいつに振るねん。俺は、考えてないで。
Q,兄貴はメッセージの返信がすごく速いですが、何か秘訣とかありますか?
A,見た瞬間に全部返信することやな。溜めたらあかんで。その瞬間終いや。
兄貴はジャグジーで映画を観ているときでも、ゲストの方から質問があれば、親身になって相談に乗っていました。
常に目の前の人を思い、真剣に生きる姿は、とてもカッコよかったです✨
一歩でも兄貴に近付けるように頑張ろうと密かに心に誓いました😊✨
次回に続く🤗。。。
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⭐️続きは、
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